こんにちは!バイヤーの吉岡です。
3月は卒業や入学・入社など、人生の節目となる季節。
ファッション業界においても、デザイナーの退任や新任のニュースも多い今日この頃です。
個人的には昨年末に発表されたセリーヌのエディ・スリマンの退任が最も印象深かったのですが、最近ではジルサンダーのデザイナーであるルーシー・メイヤー、ルーク・メイヤー夫妻が2025年秋冬コレクションを最後に退任されるというニュースを聞いて、大きなファッショントレンドの変化を感じています。
ルーク・メイヤーはSupremeの元ヘッドデザイナー。2014年にはOAMCをスタートさせ、ストリートカルチャーとモードファッションの融合を担った中心人物の一人かと思います。もともとストリートカルチャーから生まれたストリートブランドはモードの世界観とは対極の存在。服1枚の価格帯に関する価値観や捉え方も全く次元が異なります。
今では、ストリートブランドとモード、ラグジュアリーブランドがコラボしたり、一緒にスタイリングしてファッションを楽しんだりすることは何の違和感もなくなりましたが、その背景にあるのが、まさにこのような世界観をクロスオーバーさせたデザイナーの存在です。
実は日本では藤原ヒロシ氏やNIGO氏が現代のファッショントレンドの先駆けとなる「ストリート×モード」ムーブメント、つまりジャンルを超えたブランド同士のコラボやデザイナーの交流を1990年代(裏原全盛期)から意欲的に行ってきました。
キム・ジョーンズ(DIOR,FENDI,LOUIS VUITTON)やヴァージル・アヴロー(LOUIS VUITTON)のようなデザイナーが現在ここまで評価され活躍した背景にはGOODENOUGHやA BATHING APEなどの日本の大御所ストリートブランドの大きな影響力があったことは、後になって多くのファッション関係者が口にしています。
さて、前置きはここまでとして
本日はまさにストリートとモードファッションをクロスオーバーしたブランドの代表格ともいえる
OFF-WHITEからおすすめの1枚をご紹介します。
OFF-WHITE/ミリタリーブルゾン/¥49,700(税込)/サイズ:XS オンラインショップで見る
オフホワイトは2013年にアメリカ人デザイナーのヴァージル・アブローによって設立されました。実は前身ブランドとしてPYREXVISION(パイレックスヴィジョン)というストリートブランドが2012年に1シーズンのみあったことはご存じでしょうか。
ヴァージルがカニエ・ウェスト(現:YEEZYデザイナー)と一緒にFENDIでインターンをしていた際に製作したミュージックビデオの衣装が注目を浴びたことをきっかけに当時アメリカでもカルト的な人気を博したラッパー、エイサップ・ロッキーのコンサート衣装や韓国のBIGBANGのカリスマラッパーのGドラゴンなどもミュージックビデオ内で着用し、たちまちストリートブランドとして人気が沸騰しました。この流れで誕生したのがOFF-WHITEです。
オフホワイトの特徴はヴァージルの経験したストリートカルチャーを徹底した製造管理のもとでハイクオリティなファッションに落とし込むことでした。ストリートにねざしたフーディやカットソー、そしてミリタリーウェアを中心にしたファーストコレクションはパイレックスヴィジョンを彷彿させる大胆なバックプリントが印象的。見た目の迫力があり1枚で着こなしの主役になれるアイテムたちは当初は「価格が高い」というストリート軸での評価もありましたが、生産地はイタリアやルーマニアなど多くのイタリアメゾンブランドと同じ工場に拘っていたことはあまり知られていないかもしれません。
イタリアで活躍するアメリカ人デザイナーは意外と少なく、特にストリートから派生したブランドでイタリアに本拠地を置くブランドはかなり稀と言えます。そのような向かい風の中でヴァージルが貫いたモノづくりは多くのファッショニスタを虜にしました。
ブランドの魅力は一言でいうと「上質な不良感」
クリーンでスポーティなのにどこかラグジュアリーなデザイン。特に注目を集めたのはこのプリント。
アローやバイアスなどシルクスクリーンの潔いプリント技術をクラシックなミリタリーブルゾンやフーディに落とし込んだコレクションは1枚でブランドの存在感を表現するアイコンデザインとして高い評価を得ました。
また今ではブランドロゴを全面にデザインする所謂「ロゴドン」が業界のお決まりトレンドになりましたが、オフホワイトは
イタリアブランドとしてロゴプリントデザインの魅力を改めて広めた。その先駆けブランドともいえるかと思います。
こちらは本来、「OFF-WHITE」とボックスロゴに入れていたであろう場所が全て白で塗りつぶされているデザイン。
ブランドロゴに対するアンチを敢えて表現したヴァージルらしいデザインです。こういった時代性やアート性を取り入れることが
ヴァージルの手掛けたオフホワイトの真骨頂です。
ブランドロゴ、タグにもヴァージルの強いメッセージ、世界観を感じられます。
「Defining the grey area between black and white as the color off-white」
黒か白かという決めではなく、中間の価値観がオフホワイトである というメッセージは
まさにファッションにおけるストリートとモード、ラグジュアリーに対しての強烈なメッセージなのではないでしょうか?
ヴァージル・アブローは2018年から2021年までLOUIS VUITTONのメンズウェアディレクターを務めました。
そして2021年に41歳という若さでこの世を去りました。
今、OFF-WHITEは流行の中心には無いブランドになりましたが、
ヴァージルがOFF-WHITEの中で表現したスタイルは今も決して色褪せていません。
ここがファッションの本質的な価値かと思います。
ファッションとは一過性の流行ですが、
スタイルとはブランドのデザイナーの価値観、存在感に起因します。
常に自分が好きなデザイナーの価値観を信じて向き合うこともファッションの楽しさの1つです。
どれだけ古い服でもデザイナーの想いがある服は自分のスタイルとして
永遠に楽しむことができると私は思っています。
RAGTAG心斎橋店にはたくさんのデザイナーズブランドの古着が集まります。流行や1つの価値観にとらわれず
自分の好きを探してください。服とスタイルを愛するスタッフがお待ちしております。