【BALENCIAGA】"Why Are We Drawn to It ?"(なぜ、私たちは"それ"に惹かれるのか?)

みなさんこんにちは。
福岡店の村山です。

今回は、個人的に興味をそそられた1着をご紹介させていただきます。

21世紀のファッション史に、その名を確実に刻んだ天才デザイナー「デムナ・ヴァザリア」。
そんな彼が手がけた、まるで現代アートのような作品がこちら。


Balenciaga Tシャツ

BALENCIAGA/¥81,500(税込)/サイズ:S オンラインショップで見る 

【BALENCIAGA】と【UNDER ARMOUR】という異例のコラボにより、
発表された2025年春夏の
作品です

Balenciaga(パート2 正面).JPG

BALENCIAGA/¥40,700(税込)/サイズ:L オンラインショップで見る


このコラボ作品がなぜ現代アートたりえるモノなのか、
それは「リベラルアーツ的思考」を用いることでようやく理解可能となります。
それではさっそく、こちらの作品の魅力を紐解いていきましょう。


UNDER ARMOR×BALENCIAGA コラボ カットソー
この作品の魅力を理解する上で重要なのが、まず「デムナ・ヴァザリア」のクリエイションの起点を理解することです。

彼のクリエイションの起点は、70年代以降のイギリスの(労働者階級の)若者達のスタイルであり、それを現代的に再構築させること。
そのイギリスの若者達のスタイルというのが、サッチャー政権下に誕生した「フーリガン」や、その「フーリガン」から派生し誕生した「カジュアルズ」。
2000年代初頭に誕生した「チャヴ」といった若者達のスタイルです。


※「フーリガン」「カジュアルズ」のスタイルとは?

→ 暴力性を帯びたサッカーファン文化の中で生まれた、労働者階級の若者たちのスタイル。
【STONE ISLAND】や【C.P. COMPANY】などを代表とする、イタリア製の高級メゾンのテックウェアと、チームの特色を反映したスポーツウェアなどを組み合わせた、ラグジュアリーとストリートが交差するようなスタイルが特徴です。


※「チャヴ」のスタイルとは?
→ 上流階級の装いに憧れを抱いた労働者階級の若者たちによる、ラグジュアリーの模倣スタイル。
上下【NIKE】のジャージやブランドのコピー品、金の装飾などを身につけた、自身を誇張するための装いが特徴です。


ここでは詳細を割愛しますが、「フーリガン」「カジュアルズ」「チャヴ」と呼ばれる若者達が「誕生した背景」や「彼らは何を訴えかけていたのか」を知るとより深く楽しめるので、気になった方はぜひ調べてみてください。

パート2 ディティール 背中ロゴ.JPG
ここで話を戻しますが、この観点からすると、
デムナが「
ラグジュアリー」×「ストリート」×「スポーツ」スタイルを打ち出し続けてきた意図が理解できるのではないでしょうか。
【UNDER ARMOUR】という機能特化型の大衆的なスポーツブランドをハイファッションの文脈に持ち込んだのも納得ができますね。

そしてこの作品は、ただ"着ることを目的とした服"ではなく、現代社会(消費社会)に対する"アイロニカルな表現を内包した服"として見ることもできるのではないでしょうか。

BALENCIAGA ロゴ
サイズ感などは多少モディファイされてはいるものの、一見は【UNDER ARMOUR】のトップス。
胸元のブランドネームのみ【BALENCIAGA(のネーム)に差し替えられています。

Balenciaga(袖ロゴ アンダーアーマー).JPG
異例のコラボという話題性もあり、メディアはこぞって、この情報を世界に拡散し、この作品は瞬く間に注目を集めました。
やがて、著名人がこの作品を纏い始めると、我々は不思議とそれを求めずにはいられなくなる。
そして、欲望したその瞬間、「デムナ」から問いを突き付けられているような気さえしてくるのです。


なぜ「我々は高級メゾンの服を求めてしまうのか?」。

なぜ「これまで見向きもしなかったモノを、高級メゾンや著名人が評価すると、"価値あるモノ"として認識してしまうのか?」


Balenciaga(サムネイル画像).JPG
きっとデムナはこの作品を通して、高級ブランドの権威やファッション業界のヒエラルキー、消費のサイクルといった、「ファッションそのものの在り方」についての問いを投げかけていたのではないでしょうか。

この作品は"単なる服"ではなく、
「この時代に服で何が語れるのか」を突きつける、現代アート的な作品なのです。


いかがでしたでしょうか。
今回は、自身の考察も混じえながら、簡単に「デムナ・ヴァザリア」が生み出す【BALENCIAGA】 の魅力を説明させていただきました。

他にも、まだまだお伝えしたいことは沢山あるのですが、今回はこの辺でお終いとさせていただきます。