Trend Time Machine  第3回 タイトル画像

Trend Time Machine

「ダウンジャケット」
-冬の定番に成り上がる-

もはや冬の必須アイテムとなったダウンジャケット。ここ数年はその機能性だけでなく、ファッションアイテムとしても注目されていて、定番の名作から新作のコラボモデルまで今や種類も様々となっているけど、最初は“イケてる”アイテムではなかったらしい。
ダウンジャケットがファッションアイテムに成り上がる様子を、当時を知るベテランのスタッフに聞きに行ってみた。

当時を知る人
RAGTAG心斎橋店 YOSHIOKA
RAGTAG スタッフ yoshioka1979年生まれ。学生時代(90年代)にアメカジ専門のセレクトショップでアルバイトをしたことがアイデンティティとなり今に至る。大学卒業後は裏原系、デザイナーズモード系のファッションにあこがれを持って上京。RAGTAGに就職して20年間フロアに立ち、現在進行形でおしゃれを追求している。

当時を知る人
RAGTAG神戸店 TAKAO
RAGTAG スタッフ majima1986年生まれ。小学6年生のときに好きだった女の子にダサいと言われ、高校生だった姉にファッションのイロハを教え込まれ、ストリートブランド(シュプリーム、ステューシー、エイプ)にのめりこんだことがきっかけ。色々な系統のブランドを経て、今はリラックスした服装が好み。

●スポーツ用品店からはじまり

----- 今回は関西店舗を代表するファッションラバーなお二人に、もともと寒冷地用のガチアウトドアアイテムだったダウンジャケットが、今では立派にファッションアイテムとしての地位を確立していった話を聞いていきたいと思います。まず90~00年代ではダウンジャケットはどんな着られ方をしていましたか?

YOSHIOKA(以下、Y): まず90年代ではまだまだアウトドアアイテムの域を出ていなくて、それこそ2018年に再始動した[FIRST DOWN(ファーストダウン)]や[Penfield(ペンフィールド)]も、当時はスポーツ用品店に売っているような、そんなブランドでした。

TAKAO(以下、T): うちの親も着ていましたね(笑)。まだ当時はダウン=スキーウェアみたいなイメージでした。敏感な人には今も人気な[THE NORTH FACE(ザノースフェイス)]の『ヌプシ』や[Patagonia(パタゴニア)]の『ダスパーカー』の人気はありましたし、自分が通ったストリート系のブランドでもダウンジャケットを出したりはしていましたけど、まだまだ一般化はしていなかったですよね。コートやミリタリー系のアイテムが冬のアウターとしては一般的でした。

ダウンジャケット TAKAO 話している様子

Y:私が当時好きだった[HOLLYWOOD RANCH MARKET(ハリウッドランチマーケット)]などの恵比寿系ブランドでも、オリジナルを出してはいたけどまだ人気はなかったですね。

-----[ファーストダウン]は今ではかっこよく打ち出されているので驚きですね。

ファーストダウン2018年に復刻され話題に。今ではダウンの定番ブランドとして定着した。
FIRST DOWN ¥16,000(税込) オンラインショップで見る

T: その後00年代ごろからは欧米のダウンブランドが日本に入ってきて、ダウンの選択肢が大幅に増えていくんですが、中でも[MONCLER(モンクレール)]の一強時代がしばらく続きます。

Y: 2005年に木村拓哉さんがテレビCMで[モンクレール]の『エベレスト』のシャイニーパープルを着ていて大ヒットしましたね。その影響もあっての[モンクレール]時代。RAGTAGでも定番モデルは数年ずっと人気が続いていたのでよく覚えています。当時はサイズ0か1の小さめサイズが人気でした。

ダウンジャケット YOSHIOKA インタビューされている様子

T:2000年前半はエディ・スリマンの[Dior HOMME(ディオールオム)]の影響でスリムなシルエットの時代だったのもあって、[DUVETICA(デュベティカ)]も人気が出てきていましたね。神戸の街でも[モンクレール]か[デュベティカ]かという感じでした。一方で一部のアメカジが好きな人たちは『Made in USA』という雑誌の影響もあって[ノースフェイス]や[パタゴニア]などのアウトドアブランドを着始めていました。このころからダウンジャケットがファッションアイテムとして定着し始めます。

-----現代ではどちらかというとアウトドア系の方が人気だと思うのですが、当時は違っていたんですね。たしかに[モンクレール]のダウンジャケットは、スタイリッシュなデザインなので、アメカジ以外のジャンルの服好きに刺さりそうです。

モンクレール ダウンジャケット廃盤となった『HIMARAYA』を受け継いだモデル『MAYA』と世界のデザイナーたちとタッグを組む[MONCLER GENIUS(モンクレールジーニアス)]のアイテム
左 MONCLER GENIUS¥113,300(税込) オンラインショップで見る
右 MONCLER¥81,500(税込) オンラインショップで見る

T:徐々に[SAINT LAURENT(サンローラン)]や[Dior(ディオール)]などのモードブランドもダウンアイテムを展開するようになって、モード界でもファッションアイテムとして認知されていきます。

Y:さらにそのあと2010年あたりで、[JUNYA WATANABE MAN(ジュンヤワタナベマン)]がアメカジ・アウトドアスタイルを打ち出したり、[Ron Herman(ロンハーマン)]の日本上陸や[BEAMS(ビームス)]のアメカジ押しが時代にマッチして、アーバンアウトドアの大きな波がきました。

     ダウンジャケット YOSHIOKA インタビューされている様子

T:国内ブランドでは「DESCENTE(デサント)」の『水沢ダウン』や、シュラフを作っていた[NANGA(ナンガ)]、[nano・universe(ナノユニバース)]と[西川]のコラボレーションなど、おしゃれで高品質なダウンジャケットが次々に登場して、いよいよファッションアイテムとしての地位が確立されましたね。

     

デサント ダウンジャケット“国産の高品質ダウン”の人気を確立したアイテム
左 DESCENTE¥61,200(税込) オンラインショップで見る
右 NANGA¥15,000(税込) オンラインショップで見る

  

-----軽くて暖かいから、そこにデザイン性が加われば冬の覇権を取ることは必然的だったかもしれないですね。

T:本当に日本中にダウンを行き渡らせたのは[UNIQLO(ユニクロ)]の功績が大きいですけど、各ブランドが高品質だったりおしゃれなダウンジャケットを作っていたから“ファッションアイテム”になれたんだと思います。



●ドラマやカルチャーの影響

----- ちなみにお二人はどんなダウンジャケットを着てきましたか?

Y:私の周りにはヒップホップ好きがいて、その人たちの影響で父親が着ていたものや古着屋で買った『ヌプシ』を最初は着ていました。黒人系のヒップホップアーティストたちは[ノースフェイス]をなぜか好んでいたので、その影響です。その後2000年前後にレイヴカルチャーブームにどっぷり浸かって、山でトランスパーティに参加するようになった時には、今度はそうした人たちに人気だった[パタゴニア]の『ダスパーカー』を“ゴアパン”というパンツに合わせて着ていましたね。[パタゴニア]の環境保護姿勢がヒッピーたちのスタイルと合っていたんだと思います。今ももっぱら[パタゴニア]派ですね。

  パタゴニア YOSHIOKA 着用画  

パタゴニア YOSHIOKA ディテール詳細↑スタッフ私物

T: 僕も同じく『ヌプシ』を最初は着ていましたけど、窪塚洋介さんがドラマで着た影響で、ゲッコーグリーンの『ダスパーカー』もたしかにものすごく人気が出ていました。当時はドラマの影響が今よりもものすごく強くて、俳優やタレントが着用したものが大ブームになるということはほんとによくありました。それこそやっぱり木村拓哉さんは、先ほど出た[モンクレール]のものもそうですし、その前には『HERO』で[A BATHING APE(アベイシングエイプ)]の通称キムタクダウンを流行らせたので、ダウンジャケットを日本に広めたことにかなり貢献したと思います。テレビドラマで着られたアイテムをまとめるブログなんかも当時からありましたし、僕もそれを見てお店に見にいっていました。

   

パタゴニア ダウンジャケット2強アウトドアブランドの人気モデル『バルトロ』と『ダウンセーター』
左 patagonia¥14,800(税込) オンラインショップで見る
右 THE NORTH FACE¥57,700(税込) オンラインショップで見る

Y: アメブロ(アメーバ)の最初のころだね(笑)。ほかにも “ダウン”ではなく“中綿”のアイテムで人気なものはありましたね。[SILAS(サイラス)]のパフジャケットとか。

T: 懐かしいですね。2000年前半の関西では“B系”が人気だったので、僕もスポーツブランドのものを超オーバーサイズで着ていましたね。

ダウンジャケット TAKAO 話す様子

●今年着るならこんな一着

-----最後に、今年の人気傾向やおすすめのアイテムを聞いてみたいと思います。今年はどんなダウンジャケットが人気になると思いますか。

Y: まだ90年代回帰の流れは続いているので、メンズ・ウィメンズどちらでもダウンパンパンな“昔っぽい”アイテムの人気がでそうですね。昔よく見ていたようなデザインが様々な解釈で落とし込まれているので、やっぱりリバイバルしているなぁと感じます。

T:この冬はアフターコロナに向けてか、ダウンジャケットがどんどん売れてきているようです。ただビジネスシーンでは外出が減った影響で、どちらかというとプライベートでおしゃれに着こなせるものに注目が集まっています。

ダウンジャケット TAKAO おすすめ

Y:コロナを経験して、長く普遍的なスタイルで着られる“上質で高機能”なアイテムとしてダウンジャケットのニーズが高まっていますね。これらを踏まえると昔の[モンクレール]のアイテム、廃盤になった『エベレスト』『ヒマラヤ』『K2』などをRAGTAGなどで探していただくのも、まだ注目度が低い分面白いかと思います。機能面も申し分なくていいモノがありますよ。

T:[モンクレール]でいうと過去のスキーウェアを再解釈した“グルノーブルライン”を展開していて、現行でも面白いアイテムが出ていますよ。もちろん[ノースフェイス]の『バルトロ』や[CANADA GOOSE(カナダグース)]などの定番人気なアイテムも長く着られておすすめです。

-----まだファッションアイテムとしての歴史は浅い分、ユーズドでも高品質なアイテムを手に入れやすいのはいいことですね。ちなみにTAKAOさん的にはどんなスタイリングがおすすめですか?

T:そうですね。例えばトレンドのボリュームダウンにタートルネックやボタンダウンシャツを合わせて、アイビー・きれい目なスタイルに。ボトムスにはツイードのスラックスや太畝コーデュロイで、足元にはスポーツシューズやあえて[RED WING(レッドウィング)]のワークブーツを合わせて、90年代ミックスで着こなすのなんていかがでしょうか!

TAKAO おすすめアイテム右から
ダウンジャケット:Vanilla Gorilla¥29,800(税込) オンラインショップで見る
シャツ:steven alan ¥5,200(税込) オンラインショップで見る
ニット:EMPORIO ARMANI¥9,200(税込) オンラインショップで見る
パンツ:FREAK'S STORE¥2,200(税込) オンラインショップで見る
シューズ:HOKA ONE ONE¥11,400(税込) オンラインショップで見る

-----最近のムードにもぴったりですね、さすがです!(笑)今日はダウンジャケットを着たくなるようなお話が聞けました。ありがとうございました!

Y:まだまだトレンドは移り変わっていくとは思いますが、ぴったりの一着に出会えるお手伝いができれば幸いです。

T:どんどんコーディネートの幅が広がっている面白いアイテムだと思うので、これからも注目していきたいです。



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