No.15 [DAIRIKU]デザイナー 岡本大陸 さんが語る1985年周辺映画

No.15 [DAIRIKU]デザイナー 岡本大陸 さんが語る1985年周辺映画

BACK TO 1985|
イマに続く1985年の40のコト。

RAGTAG 40th

2025.09.22

「TOKYO FASHION AWARD 2022」でもグランプリを獲得した実力派ブランド [DAIRIKU(ダイリク)]のデザイナー、岡本大陸さんは、コレクションにおいて毎シーズンのテーマを「映画」に関連したもので表現するなど、生粋の映画好きデザイナーとしても知られています。今回はRAGTAGが創業した1985年にちなみ、岡本さんにとっての「1985年映画」、そして自身のクリエイションと映画の関係についてお話を聞きました。

Profile

岡本大陸

[ダイリク]デザイナー

1994年生まれ。子供の頃から多くの映画に接する。中学生の頃に大阪のアメリカ村を中心とした古着文化に触れたことで、ファッションを志し、VANTANデザイン研究所ファッションデザイン学科に入学。在学中に自身のブランド[ダイリク]をスタートさせる。2016年に「Asia fashion collection」グランプリを獲得し、2017年NYファッションウィークにて、初となるランウェイ形式でコレクションを発表。2018春夏シーズンより展示会形式でコレクションを発表し、「TOKYO FASHION AWARD 2022」を獲得。

https://www.instagram.com/dairiku/
https://www.instagram.com/dairiku.jpeg/

index

    無類の映画好きデザイナー

    DAIRIKUデザイナー岡本大陸さん

    岡本大陸さんは1994年生まれ。今回テーマとしてお聞きする「1985年の映画」は、岡本さんにとっては生まれる10年ほど前のことになります。しかし岡本さんは、幼い頃から現在に至るまで数多くの映画を見続けてきたことから、80年代映画も数多くご覧になっています。

     

    「父親が『しょうもない学校の授業を受けるくらいなら、良い映画を一本観ろ!』という人で(笑)、子供の頃から映画をたくさん観てきました。80年代の映画も好きですが、自分の中では1960〜70年代の “アメリカンニューシネマ” と呼ばれるものが一番好きなゾーンです。代表的なところで、『イージー・ライダー』(1969年)や、『卒業』(1969年)あたりの時期ですね」

     

    岡本さんの映画の見方を決定的に変えたのが、中学生の頃に見た『カッコーの巣の上で』(1975年)。「映画はハッピーエンドなもの」という、それまでの岡本さんの中の概念を覆され、後に作品周辺のアメリカの社会状況も勉強することで、より深く映画の魅力を知るようになったそうです。

     

    岡本さんの本棚

    岡本さんは時期によってばらつきはあるものの、現在でも「週に2〜4本、1日に2本観る日もある」というほどの映画好き。その視聴方法もサブスクだけでなく、映画館の特集イベントなどにも足を運んだり、映画評論家の町山智浩さんを中心とした書籍を読んだり、解説動画も追いかけるなど、かなり探究的に映画を楽しんでいます。

     

    取材時に用意してくれた分厚い映画本、『死ぬまでに観たい映画1001本』にも、岡本さんが “これまで観た映画” としてたくさんの付箋が貼られていました。それでもまだ観られていない作品は多く、引き続き映画に対する興味を持ち続けているそうです。

    岡本さんの『死ぬまでに観たい映画1001本』

    学生時代から続く、映画テーマのクリエイション

    DAIRIKUのデザイナー岡本大陸さん

    岡本さんは中学生時代にアメカジや古着にのめり込み、ファッションの道を志すようになりましたが、ファッションのクリエイションに取り組む中で岡本さんを助けてくれたのもまた、映画でした。

     

    「服飾の学校で服作りをする上で、テーマを設定するのが苦手だったのですが、自分の好きな映画だったらテーマに出来そうだと思って、学生の頃から映画をテーマにコレクションを作ってきました」

     

    岡本さんが学生時代に最初にテーマにしたのは、モッズカルチャーやファッションのバイブルともなっている『さらば青春の光』(1979年/イギリス)。その後も映画をテーマにコレクションを作り、2018年春夏に[ダイリク]設立後も常に映画をテーマにしたコレクションを展開しています。

     

    「ファーストコレクションは『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992年)と『サムウェア』(2010年)をテーマして、その次は『キッズ』(1995年)、次に『アメリカン・グラフィティ』(1973)など、自分が見て好きな映画をコレクションにしてきました。最初は今よりも映画のリアリティに近いクリエイションで、その映画に出てきた衣装を参考にしたアイテム、色合いのものも作っていました」

    岡本大陸さんにとっての「1985年映画」

    「ブレック・ファスト・クラブ」のページ

    そんな岡本さんの中で「1985年の映画」というと、2021年秋冬コレクションのテーマにもしたアメリカの青春映画『ブレックファスト・クラブ』が最も印象が強いそうです。

     

    「これまで[ダイリク]で80年代をテーマにした唯一のコレクションです。そのシーズンは、『ブレックファスト・クラブ』にも出ていた当時の俳優たちのことを指す “Brat Pack(プラット・パック)” というワードをテーマにしました。1985年は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が代表的ですが、『セント・エルモス・ファイアー』(1985年)、1986年の『フェリスはある朝突然に』みたいな、アメリカのスクール系青春映画が多い時期で、そういう作品もすごく好きで。コレクションでもスタジャンや、『プリティ・イン・ピンク』(1986年)のイメージでピンクのカーディガン、『アウトサイダー』(1983年)のイメージでカットオフのスウェットを作ったりしました」

     

    DAIRIKU 2021年秋冬コレクションのアイテム
    岡本さんのiPad

    バッドエンドや暗いトーンも多かった60年代、70年代の映画と比較して、一気にトーンも明るくなった80年代の映画。この変遷について、岡本さんはご自身の感覚で分析します。

     

    「僕も生まれる前なので想像の部分もありますが、70年代後半の『ロッキー』(1976年)あたりから、ハッピーエンドととも捉えられるような映画が多くなってきた印象です。あと80年代当時は家庭用ビデオデッキも普及してきたことで、みんなが家庭で気軽に見られる映画が増えてきたのかなと。『ビバリーヒルズ・コップ』に代表されるように、コメディ要素も増えたし、上映時間も2時間ものが少なくなって、80分、90分でライトに見られるものが増えたと思います」

     

    こうした80年代映画を見る中で、岡本さんはそのファッションにもフォーカスして作品を見ることが多いそうです。

     

    「80年代ってファッション的にも独特な時代だと思うんです。あの当時のファッションは、今から見ると少し“ダサかわ”というか。色使いもポップだし、ジャケットにも肩パットが入っていたりしている時代で、ダサさと絶妙なバランスではあるんですが、それも逆に新鮮な気がしているんです」

     

    映画で見返す80年代ファッション

    80年代アメリカ映画

     

    岡本さんは職業柄もあって、映画を観る時にはその作品中のファッションをよく見るようになったと話します。

     

    「たとえば『ブレックファスト・クラブ』で言えば、登場人物が着ているデニムジャケットはどこのなんだろうとか。古着屋に行って見つけたり、検索したりはよくやっています。ブランド名が出てこないことも多いけど、その頃のディティールやカラーはインスピレーション源になることが多いですね」

     

    今の時代に、岡本さんと同世代、それよりも下の世代にとって、80年代や「1985年」映画を改めて見返す意味について岡本さんにお聞きしました。

     

    「今って、良くも悪くもいろんなものがミックスされている時代じゃないですか。だから自分が着ている服も、『それがどこから来たものなのか』を分からずに着ている人も多いと思うんです。それはそれでいいし、モノがいっぱいある時代だから自由な着方も出来るけど、たとえばモヘアニットには70、80年代やパンクスの要素があるんだとか、そういうことを知ると、もっと服を着るのが楽しくなると思います。80年代のアメリカの青春ムービーを観れば、アメカジについてもさらに分かるようになるし、今よりデジタルじゃない時代に、みんながどんな過ごし方をしていたのかを知るのも面白いと思います」

    DAIRIKUのデザイナー岡本大陸さん

    現在も映画をインスピレーションのひとつとしてクリエイションを続けている[ダイリク]。しかし近年の岡本さんの服作りは、かつてよりも映画自体にとらわれなくなって来ているようです。

     

    「最近の服作りは、あくまでも “服が先” になることが増えました。作りたいものが先行して生まれて、そこに映画的要素を加えて行くというか。やはり昔の服を参考にしたとしても、今の時代に作ろうとすると、似ているモノでも作る人によってかなり変わるんです。それが結果的に新しい提案にもなるのかなと考えています。そのアイテムやルックを見た人が、『自分もこういうスタイリングをしてみよう』と思ってくれたら嬉しいです。もちろん[ダイリク]の服であればさらに嬉しいですが、僕も昔買いたくても買えないブランドは古着で買っていたので、そういう楽しみ方もファッションの面白さだと思います」

     

     

     

    interview & text : 武井幸久(HIGHVISION)
    photo : TAWARA(magNese)

    RAGTAG 40th スペシャルサイトオープン!

    OTHER POST こちらの記事もおすすめです

    BACK TO LIST

    PICK UP BRAND このブランドの記事もおすすめです

    VIEW MORE

    RAGTAG Online オンラインショップでアイテムをチェック

    VIEW MORE