No.23 「1985年生まれの履歴書」スタイリスト 入江陽子さんの場合

No.23 「1985年生まれの履歴書」スタイリスト 入江陽子さんの場合

BACK TO 1985|
イマに続く1985年の40のコト。

RAGTAG 40th

2025.11.28

ファッション業界で活躍する1985年生まれの方にお話を聞く 「1985年生まれの履歴書」。今回はファッション誌やブランドビジュアル、そしてアーティストなどのスタイリングなど幅広く活躍する、スタイリストの入江陽子さんにお話をうかがいます。自由度の高いスタイリングで知られる入江さんのファッション観は、どのようにして生まれたのかをお聞きします。


interview & text : 武井幸久(HIGHVISION)
photo : TAWARA(magNese)

入江陽子

Profile

入江陽子

スタイリスト

1985年、広島県生まれ。長瀬哲朗氏のアシスタントを経て2013年に独立。国内外のエディトリアル、ブランドビジュアル、アーティストのスタイリングなどで幅広く活動中。

index

    「あるものを工夫」することを覚えた子供時代

    入江陽子さん

     

    RAGTAGの創業年と同じ1985年生まれの入江陽子さんは、ファッションブランドのビジュアルやファッション誌だけでなく、ミュージシャンやアイドルグループのスタイリングなどでも活躍されている人気スタイリストです。入江さんがファッションに目覚めたのは小学校高学年の頃。ご自身では「少し変わった子だったと思う」と振り返ります。

     

    「母が物を大切にする人で、着なくなった洋服を切って、また作ってくれたりする人でした。私も服は好きだったのですが、新しいものはあまり買ってくれないので、母親の大きなサイズのジャケットをベルトで縛って着たりしていて。いま考えると変わってますよね(笑)。中高生になると自分で選んで服を買うようにはなるのですが、高いものは買えないので、古着をミックスしたり、自分なりにアレンジして着ていました。そういう感覚は今の仕事にも通じている気がします」

     

    当時入江さんが読んでいた雑誌は、『Zipper(ジッパー)』、『FRUiTS(フルーツ)』、『CUTiE(キューティ)』などのガールズファッション誌が中心。ミュージシャンのCharaさんが古着を上手に着こなしている姿などが好きだったそうです。そうした90年代的なファッションスタイルを楽しんでいた入江さんに転機が訪れたのは、高校生の時。

     

    「その頃から急にヒップホップが好きになるんです。MTVとかを観るようになって、ブラックミュージックにハマり、ダンスも始めるようになると、着ている服もスポーティなものに変わっていきました。古着の[ラルフローレン]や[トミー・ヒルフィガー]を着るようになって、ダンスをベースにしたスタイルになりました」

     

    入江さん 足元

     

    入江さんが「仕事」としてファッションを考えるようになったきっかけは、ファッション専門学校を舞台にした矢沢あいさん作の漫画、『ご近所物語』(1995-1997年 集英社『りぼん』に掲載)を読んだことから。「そういう仕事もあるんだ」という興味から、進学先には文化服装学院大学でファッションデザインを選んだ入江さんですが、いざ勉強を始めると、限界も感じるようになったと話します。

     

    「当時から特定の憧れのデザイナーやブランドはなかったのですが、学べば学ぶほど、『ゼロから服を生み出すのは、ごく一部の限られた才能の人しかできない』と思うようになったんです。だから学校が終わるとダンスの練習に明け暮れていたりして、卒業したらごく普通に就職しようと考えていました」

     

    “スタイリスト入江陽子”を生んだ意外なきっかけ

    入江陽子さん

     

    将来の仕事に迷いを感じていた大学時代、入江さんをスタイリストという仕事に目を向けるきっかけとなったのは、意外にもアメリカの人気ドラマシリーズの『セックス・アンド・ザ・シティ』(1998-2004年。ニューヨークを舞台にした女性たちのドラマで、日本でも人気になった作品)を観たことから。

     

    「レンタル屋さんで借りて観ていたのですが、作中の衣装が気になりはじめ、それを手がけているスタイリスト、パトリシア・フィールドさんの存在を知りました。スタイリストという仕事があることは知っていたけど、こういうやり方もあるんだということを知って、『自分はゼロから作るより、あるものをどう合わせるかの方に興味がある』と気づいたんです。当時はダンス好きの延長で『LUIRE(ルイール)』という雑誌をよく見ていたので、そこで仕事をされていたスタイリストのアシスタントに志願しました」

     

    そのスタイリストの方のもとで2年間修行した入江さんは、今度はスタイリストの長瀬哲朗さんに弟子入り。そこから4年間のアシスタントを経て、2013年に独立を果たします。

     

    「長瀬さんのところに入った時は、一応スタイリストアシスタントの仕事は最低限出来るものの、ほとんどブランドも知らないし、あまりお役に立っていなかったと思います(笑)。でも、一気にもの凄い情報量と仕事量が入ってきたので、そこでもう一回勉強し直すことが出来て、自分のスタイリストとしてのベースを作ることが出来ました」

     

    入江陽子さん

     

    6年に及ぶアシスタント時代は「常に黒子に徹していた」という入江さん。いざ独立してもすぐに仕事はなく、再び迷いの中にありましたが、いくつかの女性誌のスタイリングページを担当する中で、徐々に「自分らしいスタイリング」が見えてきたと話します。

     

    「それまでは、どこか『スタイリストはこうじゃなきゃいけない』とか、『ファッションの歴史や流れを汲んでスタイリングをしなければいけない』と考えていたのですが、私に声をかけてくれた雑誌では比較的自由にやらせてくれたので、シンプルに自分が好きなものを組み合わせるようになりました。それが良かったのか、何度か仕事をいただけるようになって、徐々に自分のスタイルも作られていったと思います」

     

    “感覚重視”のスタイリング

    入江陽子さん

     

    「私の場合は完全に“感覚”でスタイリングをしていると思います。だから同業者には『(ファッションヒストリーを)分かっていないスタイリスト』と思われているかもしれないですけど(笑)。でも、そもそもファッションというのは何周も繰り返していると思っているので、過去を参照していたら新しいものは生み出せない、そこに囚われていたら楽しくないと思うようになったんです」

     

    現在の入江さんのスタイリングワークは多岐に及びます。ファッション誌、ブランドのビジュアル、広告、そして近年増えているのがアーティストやアイドルグループのスタイリング。特にグループのスタイリングは、メンバーの個性を考えつつ、自由にスタイリング出来る面白さがあると入江さんは話します。

     

    photo IBUKI KOBAYASHI ELLE JAPON 11月号掲載

    photo IBUKI KOBAYASHI ELLE JAPON 11月号掲載

    NumeroTOKYO 2025年12月号

    NumeroTOKYO 2025年12月号

    入江さんのスタイリング
    入江さんのスタイリング

     

    「特に韓国のグループは、ファッションの歴史の部分を考えずに感覚的にスタイリング出来る気がします。結果的にすごく影響力があるので気は抜けませんが、今までナシと思われていたようなものでも、若い世代の子が着るとアリなものになったりするので、バランスを考えながらも“攻めた”スタイリングが出来るのが面白いんです」

     

    次なる新しいものを生み出すために

    入江さんの着こなし

     

    「新しいファッション」に興味が尽きない入江さんは、最新の海外のコレクションやスタイリストの動向も常にチェック。しかしその興味の範囲は常に変動を繰り返しているそうです。

     

    「デザイナーではジョナサン・アンダーソン、ロシアのスタイリストのロッタ・ヴォルコヴァ、先日[ロエベ(LOEWE)]のデザイナーになった[プロエンザ スクーラー(Proenza Schouler)]のデザイナーデュオ(ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデス)、あとは[アディダス(adidas)]でもコラボレーションしていたウエールズ・ボナーも好きでした。若手のクリエイターを中心にチェックしていますが、飽きっぽいので、結構その対象も変わるんです(笑)」

     

    ちなみに入江さん本人の買い物は、「常にトライ&エラー」と本人が笑いながら言うように、インスタグラムなどで面白いブランドやアイテムを見つけると買ってみたり、地方のリサイクルショップを回って、誰も気に留めないようなものを探し出すなど、自由なモノ選びを楽しんでいるそうです。

     

    そしていま、入江さんが興味を持っているのが、「自分デザインしたものを作ること。2年くらい言っているので、そろそろやらなきゃとは思っています(笑)」。大学時代に一度は考えて断念したデザイン業への情熱が、改めて沸々と湧き上がっていると入江さんは話します。もしかすると数年後には、“デザイナー入江陽子”さんのデザインしたものがブランドとして発表される日も来るかもしれません。

     

     

    RAGTAG 40th スペシャルサイトオープン!

    OTHER POST こちらの記事もおすすめです

    BACK TO LIST

    PICK UP BRAND このブランドの記事もおすすめです

    VIEW MORE

    RAGTAG Online オンラインショップでアイテムをチェック

    VIEW MORE