No.30 「1985年、アントワープシックスが生まれた日」

No.30 「1985年、アントワープシックスが生まれた日」

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イマに続く1985年の40のコト。

RAGTAG 40th

2026.01.13

ENDO

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原宿店 / バイヤー

COMME des GARCONSやnoir kei ninomiyaを中心に、時代が変わっても揺らぐことのない美しさと、強さの中にも繊細さを感じるブランドに惹かれます。これまでドメスティックからストリート、インポートブランドまで幅広く触れてきましたので、ご来店の際にはお好きなブランドやお洋服のお話で盛り上がれたら嬉しいです。

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    はじめに・アントワープシックスとは

    原宿竹下通りにRAGTAG 1号店が誕生した1985年、遠いベルギーの地で、若いファッションデザイナーたちの才能が静かに開花し始めていました。のちに、「アントワープシックス」と呼ばれ、80年代以降の近代ファッション史に大きな功績を残していくことになるその6人とは、1981年にベルギーのファッション名門校「アントワープ王立芸術アカデミー」のファッション科を卒業したドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ダーク・ヴァン・セーヌ、ダーク・ビッケンバーグ、マリナ・イーです。

    今回は、今日に至るまでファッション界に多大なる影響を与え続けてきたアントワープファッション、そしてベールに包まれたそれぞれのデザイナーとブランドの魅力についてお話しさせていただきます。

    DRIES VAN NOTEN

    DRIES VAN NOTEN

    アントワープシックスのメンバーとしてまずご紹介したいのが、私も個人的に敬愛するデザイナーのひとり、ドリス・ヴァン・ノッテン。

     

    [ドリスヴァンノッテン]の魅力については以前にもこちらの記事(No.05 「同い年。1985年に生まれたブランド」DRIES VAN NOTENで述べましたが、ドリス自身の高い美意識とクラフトマンシップから生み出される繊細で丁寧な服作り、テキスタイルやファブリックの美しさ、色柄を巧みに組み合わせた緻密なバランス感覚が[ドリスヴァンノッテン]の魅力です。

     

    生命力をも感じる美しいフラワーモチーフやジャカード生地、色彩豊かなデジタルプリント、刺繍やビジューを施した装飾的なアイテムの数々は[ドリスヴァンノッテン]の代名詞ともいえます。

     

    時を超えても色褪せることのない普遍的な美しさを一貫して表現し続け、これまで沢山のファッションラバーを魅了し続けてきたドリス・ヴァン・ノッテン。長きに渡りインディペンデントブランドとして活動してきましたが、2018年にスペインの企業「プーチ」にブランドを売却しています

     

    38年のキャリアの中でファーストコレクションから通算150回のコレクションを手掛けたドリスは、2025年春夏メンズコレクションを最後に現在はデザイナーとしての第一線を退きましたが、その魂は後継デザイナーのジュリアン・クロスナーに受け継がれています。

    DIRK BIKKEMBERGS

    DIRK BIKKEMBERGS

    ファッションとスポーツを融合したスタイルが特徴のダーク・ビッケンバーグは、メンズのシューズコレクションを中心に人気を博したデザイナー。

     

    1981年にアカデミーを卒業したビッケンバーグは、卒業コレクションで当時の最高得点である97点を獲得したという実力者です。84年から2年間ジャン=ポール・ゴルチエの下で働き、85年には最も有望な新人デザイナーに贈られる「ゴールドスピンドル賞」を受賞。1988年にはアントワープシックスの中で最も早くパリのメンズコレクションでフルラインを発表しています。

     

    ブランドコンセプトは「Mens sana in corporoe sano(健全な心は健康な身体に宿る)」。

     

    メンズコレクションにルーツのある[ダークビッケンバーグ]はそのブランドコンセプトの通り、男性らしい肉体美をより美しくセクシーに魅せる服作りに長けていました。特に皮革はブランドのアイコニックな素材で、レザージャケットのほか、長いシューレースやコードを巻き付けたレザーブーツは最も有名な作品のひとつです。

     

    2012年に自身のブランドを売却し、現在はビッケンバーグ自身もファッション業界を退いていますが、アントワープデザイナーとして一時代を築いてきたひとりです。

     

    MARINA YEE

    MARINA YEE

    アントワープシックスの中でも特にミステリアスな存在として知られるマリナ・イー。

     

    アカデミー卒業後に数年ほど自身の作品を発表したのち、しばらくの間ファッションの世界からは遠ざかっていた彼女ですが、東京のコンセプトショップ「LAILA TOKYO」がコンタクトを取ったことがきっかけで2018年にその長い沈黙を破り、アイコニックな4型のアイテムを発表する形で自身のブランドをリスタートしています

     

    ブランドのアイコンは、日本の折り紙からインスピレーションを得て、洋服を二次元的な発想で捉えた「Origami」シリーズをはじめ、デッドストックの生地を使用したリメイクアイテムや名作と呼ばれるトレンチコートなど。

     

    LAILA TOKYOをはじめとする日本のセレクトショップでコレクションの展開やインスタレーションを行うなど日本との所縁深く、その実直な物作りの姿勢が日本人のファンを多く獲得していることにも納得です。

     

    今でこそサスティナブルやアップサイクルという概念はファッション業界では当たり前になりつつありますが、マリナ・イーは当時から「美は再構築の中に宿る」という信条のもと、使い古された生地に再び命を宿すこと、そして大量生産ではなく、自らの信念と目の行き届く範囲で不定期に作品を発表する姿勢を貫いた、非常に誠実なデザイナーです。そんな彼女の姿は「デザイナーの姿をした哲学者」とも呼ばれるほど。

     

    つい先日の2025年11月1日、がんとの闘病の末に67歳でこの世を去ったマリナ・イー。彼女がファッションを通して伝え続けた美学と哲学、ベールに包まれていながらもどこか温かな人間味を感じるその伝説的な存在は、今もなおファッション愛好家を虜にし続けています。

    ANN DEMEULEMEESTER

    ANN DEMEULEMEESTER

    黒を基調としたダークでロマンティックな世界観、アートや音楽などからインスピレーションを得たゴシックなムード、静と動、光と影といった対照的な要素を取り入れた独創的な美学が特徴のアン・ドゥムルメステール。

     

    モードの礎を築いたともいわれる彼女の作品の特徴は、流れるような空気を纏ったシルエット、アシンメトリー、ドレープ、レイヤード、ドローストリングスなどから生み出される退廃的なムードが魅力です。

     

    [アンドゥムルメステール]の魅力についてはバイヤーIHARAのこちらの記事(No.13 「同い年。1985年に生まれたブランド」ANN DEMEULEMEESTERもぜひご覧ください。)

     

    2013年を最後にアン・ドゥムルメステールはデザイナーを退任し、その後ブランドの後継者としてセバスチャン・ムーニエや、ルドヴィック・ド・サン・セルナン、そして現在はステファノ・ガリーチがクリエイティブディレクターとしてブランドを引き継いでいます。

    Walter Van Beirendonck

    Walter Van Beirendonck

    アントワープシックスの中で最も異彩を放っている、モード界の異端児とも呼ばれるウォルター・ヴァン・ベイレンドンク。

     

    彼のデザインの特徴は、奇抜なグラフィックやシルエット、鮮烈な色使い、ユニークなモチーフの数々。アバンギャルドで型破りともいえる独創的なデザインを貫き続けるその姿勢は、まさに唯一無二のデザイナーです。

     

    1983年に母校であるアントワープ王立芸術アカデミーの教員になり、2007年には同アカデミーのファッション学科長にも就任している彼は、これまでヴェロニク・ブランキーノやベルンハルト・ウィルヘルム、クレイグ・グリーン、クリス・ヴァン・アッシュ、ラフ・シモンズ、デムナ・ヴァザリア、ミキオサカベなど、数多くの世界的デザイナーを輩出してきた指導者としての一面も併せ持っています。

     

    1993年に自身のブランド[W&LT]をスタートさせ、2001年に自身の名を冠した[ウォルターヴァンベイレンドンク]を、同年にセカンドラインの[aestheticterrorists(エステティックテロリスト)]を発表。

    アバンギャルドな作風でありながら、商業主義的なファッション業界や政治、社会問題に対しても常に疑問を持ち続け、独立したレーベルで挑戦を続けている類稀なデザイナーでもあります。

    Dirk Van Saene

    ダーク・ヴァン・セーヌは1981年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、自身の名を冠したブランド[ダークヴァンセーヌ]をスタートさせ、1982年にはアントワープに自身のショップ「Beauties&Heroes」をオープンさせています

     

    2013年にはセレクトショップ「DVS」をオープンし、[ウォルターヴァンベイレンドンク]や[ラフシモンズ]、[ベルンハルトウィルヘルム]などを取り扱っていました。

     

    前述のウォルター・ヴァン・ベイレンドンクとは2018年に正式に結婚公私ともにパートナーでもあり、お互いを1番の理解者と公言している通り、ダーク・ヴァン・セーヌの作風もオリジナリティ溢れるユニークなデザインが特徴です。

     

    ファッションデザイナーとしてだけではなく、絵画や家具、セラミックを使用したアート作品などを発表する芸術家としての一面や、ウォルターと共に母校で教鞭をとるなど指導者としての顔も持つ多才な人物です。

    おわりに

    私の思うアントワープファッションは、どこかミステリアスで、退廃的で、そしてアヴァンギャルド。

    正統派ファッションやリアルトレンド、大量生産される服とは明らかに一線を画した、静かで緻密で、美学を感じる服。それがアントワープファッションの魅力だと思っています。

     

    アントワープシックスはそれぞれがその独自の世界観でファッション業界に新風を吹き込みましたが、その影響は、のちに第二世代ともいえるアントワープ出身デザイナーの波も生み出します。

     

    今もなおファッション業界で活躍し続けるラフ・シモンズをはじめ、ハイダー・アッカーマン、ベルンハルト・ウィルヘルム、クリス・ヴァン・アッシュ、AFヴァンドヴォルスト、ヴェロニク・ブランキーノなど、名だたるデザイナーを輩出してきたアントワープ。

     

    アントワープシックスと同時期にパリでデビューしたマルタン・マルジェラも、アントワープファッション、また今日のファッションを語る上ではなくてはならない存在です。

     

    2026年3月から、アントワープシックスの誕生40周年を記念した展覧会がベルギーのアントワープ・ファッション・ミュージアムで開催される予定となっており、今もなおその存在は世界の注目を集めています。

     

    現在アントワープシックスのメンバーのうち、創業デザイナーがブランドを手掛けているのはウォルター・ヴァン・ベイレンドンクのみとなりましたが、RAGTAGではそれぞれのブランドの過去のアーカイブ作品や、本人期と呼ばれる創業デザイナーの手掛けていた時代のアイテムなど、様々なアイテムを取り扱っております。情熱に溢れた当時のアントワープの空気に思いを馳せながら、ぜひお気に入りの一着を探してみてください。

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