新世代日本デザイナーによるヴィンテージ新解釈
Trend Time Machine
RAGTAGのスタッフが、現在の市場動向やお買い取りの現場から、リバイバルトレンドを語る連載。
今回はヴィンテージを新しい解釈で提案する新世代日本デザイナーについて、ベテランバイヤーのYOSHIOKAとMOCHIZUKIが語ります。
Profile
YOSHIOKA
心斎橋店 / 店長
2002年入社。学生時代にアルバイトでインポートストアで働いたことをきっかけに現職に至り、デザイナーズブランドとヴィンテージウェア共に造詣が深い。古着一筋20年、現在も販売員・バイヤーとして第一線で活躍。
Profile
MOCHIZUKI
渋谷店 / バイヤー
2007年入社。渋谷店で買取業務をメインに担当。「多岐に渡るブランドに魅了され続けはや十数年、常にファッションへの情熱と探究心は尽きることがなく、今もなおファッションを楽しんでいます。お買い取りはどのジャンルでも是非お任せください」
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“ヴィンテージ”新解釈 デザイナーの変遷
-お二人はそれぞれ、ヴィンテージとどのように接してきましたか?
YOSHIOKA(以下 Y) : 1979年生まれの僕が最初にアメカジに触れたのは中学時代で、その頃は[ア・ベイシング・エイプ]とか[ステューシー]、[グッドイナフ]など、いわゆる裏原宿ブランドがアメカジを新たな解釈で提案していた時期でした。
MOCHIZUKI(以下 M) : 僕は少し下の1984年生まれで、高校の頃に少し価格が正常化した[エイプ]や[アンダーカバー]を見ていて、古着屋さんにも行っていたのですが、大学からは完全にデザイナーズに夢中になりました。アメカジは周りにカッコよく着こなしている人がいなかったので、当時は「おじさんが着ているもの」という印象でしたが、20代後半くらいに [エンジニアドガーメンツ]や[ナイジェル・ケーボン]を知って、その辺からヴィンテージの奥行きも楽しくなりました。
-お二人ともヴィンテージの「ガチガチのアメカジ」というよりも、デザイナーによる新解釈アメカジが洗礼になったのですね。いま[ダイリク]や[MASU(エムエーエスユー)]、[シュガーヒル]など、日本の新世代デザイナーのヴィンテージ新解釈が人気です。その辺はどのように見ていますか?
M : 新しい流れですよね。今まではデザイナーズブランドは、インスピレーション源をコテコテにトレースして来なかったのですが、新世代は古着の解釈をそのままやってしまう面白さがあって、しかも若い世代はそれが新しい服として刺さっているんだと思います。
Y : 僕らの世代ではそれが[エイプ]や[アンダーカバー]、あとは[N.ハリウッド]や[ラウンジリザード]などだったわけですよね。その流れが何周もして今があると思いますが、当時と違うのは素材や染めの技術が格段に進化しているところです。
ヴィンテージを新しい解釈で取り込む新世代のデザイナーが面白い
-「アメカジをはじめとするヴィンテージを再解釈する」というのは、ある種日本独自のものとも言えるのでしょうか。
Y : 「アメリカントラディショナルの定義はアメリカ人ではなく、日本人がやった」と買いてある本を読んだ記憶があるのですが、デニムの“赤耳”とか、古着の価値付けもそうなんですよね。日本人はアメカジの解釈の仕方が上手いのだと思います。アメカジと言いながら、“ジャパニーズアメカジ”であり、それが日本だけでなく海外にも広まったのだと考えています。
M : パリコレなどに進出している日本のデザイナーは、かつては海外から影響を受けていましたし、その逆に西洋のデザイナーが裏原からインスピレーションをもらった部分も出てきました。でも今の若い日本のデザイナーは、むしろそこまで世界を見ていないと思いますね。そこも面白いんです。
ヴィンテージ加工を突き詰めている[DAIRIKU] のTシャツとシャツ。Tシャツ ¥11,400 / シャツ ¥37,200(ともに税込)
-RAGTAGでもそういう新世代デザイナーズブランドの人気は出てきていますか?
M : 増えていますね。[エンジニアドガーメンツ]や[ニードルズ]、[ノンネイティブ]、[コモリ]なども相変わらず強いですが、[ダイリク]は昨年あたりから、[エムエーエスユー]は今年もっと人気が出ると感じています。
-それぞれの新世代ブランドのクリエイションで面白い部分はどんなところでしょう。
Y : [エムエーエスユー]の場合だと、代表作でもあるポップコーン素材ですね。僕らの世代にはウィメンズに見えてしまいますけど、それをメンズで提案しているのがすごく新しいと思います。
M : ジェンダーレスでもあるのも面白いところですよね。一方の[ダイリク]は、ヴィンテージの加工をかなりしっかりやっていたり、わざわざスウェットの霜降りも作ったり、ハンドメイドの部分もあったり。
Y : 逆に[エムエーエスユー]は“元ネタ”が分からないものが多くて、それも若い世代に新鮮なのだと思います。僕の若い世代のお客様も、元々は海外のデザイナーズがお好きだったのですが、だんだん[エムエーエスユー]が好きになり、その延長でその“元ネタ”であるヴィンテージのジャケットを古着で買ったと言っていました。
M : そういう方も増えていると思います。古着で高騰している“ベートーヴェン・スウェット”を[エムエーエスユー]がニットで表現しているのも、そんな流れの一つですよね。高騰した古着よりもこっちの方が面白いでしょ、という提案です。
Y : だからまた古着が人気なんですよね。
ネクスト・ヴィンテージにも注目
[Columbia]のフィッシャーマンジャケットや[L.L.Bean]の“バーズアイニット”など新たな人気を得ている古着にも注目。※すべてスタッフ私物
Y : 僕は去年あたりから[L.L.ビーン]の古着を個人的に買うようになったのですが、その辺にも新たな流れが来ているのを感じます。
M : [L.L.ビーン]の“バーズアイニット”も人気ですよね。数年前まで数千円で買えたものが、今や2万円を超えたり。雑誌で影響力のある方が着用して火がついた気がします。
Y : [ダイワピア39]で昨年めちゃくちゃ売れたカラーダウンベストにも、[L.L.ビーン]のテイストを感じますね。ヴィンテージが掘られまくっている中で、新たな価値を見出そうとする動きも活発です。
-そうなると、今後RAGTAGに[L.L.ビーン]などを持ち込む方も増えそうですよね。
M : はい。僕たちバイヤーも常にトレンドを見ているので、しばらく前までしっかりお買い取りできなかったものも、その価値付けが変わってきています。
Y : 例えば僕が去年古着屋で買った[コロンビア]のフィッシングジャケットなんかも数千円でしたが、今のファッションに照らし合わせると、もっと価値が上がっていいものだと思います。単純にモノとして見るのではなく、時代を先取りするような気持ちでお買い取りをしたいと思っています。
M : 僕もこの間弊社のオンラインで2010年の[N.ハリウッド]のベストを比較的安く購入したのですが、こうしたものももっと価値が上がっていく気配を感じますね。
Y : RAGTAGでもそんな「ネクスト・ヴィンテージ」をもっと提案していきたいですよね。ファッションとして新しい価値を感じる古着とともに、今なら[ダイリク]や[エムエーエスユー]などの新世代ブランドも提案できれば、面白いお店になると思います。
M : そんなことができたら、ワクワクしますよね!
[MASU]のポップコーン素材のジャケット、“ベートーヴェン”ニット、ウエスタン風シャツ。それぞれ素材使いに特徴が。ニット、ジャケット(スタッフ私物) / シャツ ¥44,000(税込)