発信源はK-POP? 90年代ヒットブランドが再燃
Trend Time Machine
RAGTAGのスタッフが、現在の市場動向やお買い取りの現場から、リバイバルトレンドを語る連載。
今回は、90年代を中心に大ヒットしたブランドの人気が再燃している理由を、K-POPカルチャーのトレンドから検証します。
Profile
GOTO
WEB買取チーム / バイヤー
2003年入社、バイヤー歴17年。大学生のころに裏原系ファッションにはまり、ファッションの仕事をしたいとラグタグに入社。店舗を経て、育休復帰後はWEB買取チームで買取を担当しています。母業をしながら、好きなファッションの仕事ができて楽しく過ごしています。
Profile
KIMURA
福岡パルコ店 / 店長
2012年入社、バイヤー歴8年。これまで福岡地区の店舗で販売、買取の経験を積み、2022年から店長に。若い世代から長くラグタグを利用してくださっている方まで、店舗という最前線で、たくさんのお客様とファッションの話で盛り上がることが何よりも楽しみです。
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K-POPアーティストがトレンドを牽引
― 90年代を中心に流行したブランドの人気が再燃しているのは知られていますが、今回はその発信源としてK-POPカルチャーも影響しているのでは?という仮説に基づいてお話をさせてください。実際にそのトレンドは来ている実感がありますか?
GOTO( 以下 G) : この1、2 年くらい強く感じますね。K-POP 第1次ブームの頃はラグジュアリーブランドのキラキラ、ギラギラしたイメージが強かったですが、それが徐々に90年代に流行したカジュアルなブランドに移行してきました。
― 誰かきっかけとなったアーティストはいるのでしょうか?
G : 私の印象では[ヴェルサーチェ]などのリバイバルブランドを着始めたのはBIGBANGあたりの気がします。その後にBLACKPINKというガールズグループが、“ 肌見せ” や“ ヘソ出し”の服装に厚底のスニーカーとかスポーティなものをミックスし初めて、ファッションアイコンになりました。
― 個人的にもK-POPは追いかけていたのですか?
G : 私は昔一時期ハマっていましたが、最近は少し落ち着きました(笑)。
KIMURA(以下 K) : 私は正直ほとんどK-POP は通っていないのですが、RAGTAGの若いスタッフを含めてそのトレンドを意識している人が増えていて、「知っておかないと仕事的にもマズいかな」と思うようになりましたね。
― いまK-POPにハマっている世代はやはり20 代ですよね。
K : そうですね。“Z 世代”と言われる方たちです。
― ファッション的にも「見ておかなければならないトレ ンド」と意識し始めたきっかけはありますか?
G : パリコレとかファッションウィークのスナップを見ていても、日本のアーティストの方はもちろんいますけど、注目されているのはK-POP のアイドルの子たちなんですよね。
K : そうなんですよね。
90年代を席巻したブランドの人気が再燃
― お二人はそれぞれ90年代トレンドを体感した世代かと思うのですが、個人的には『CUTiE』や『Zipper』のような“青文字”と呼ばれる雑誌のようなスタイルはされていましたか?
G : 着ていました(笑)。当時はお金もそんなに使えなかったので、[ヒステリックグラマー]が欲しかったけど、手が出なかった思い出があります。
K : 私は姉と一緒に『CUTiE』を見ていて、自分も欲しくなりました。ただ私は田舎の出身なので、買いに行ける機会がなくて。家の近くで買える、似たようなデザインのものを買っていました(笑)。
― それでは、実際にいまK-POPの影響などで盛り上がってきているブランドについてお話ししましょうか。
G : はい。まずは[クレージュ]ですね。90 年代に浜崎あゆみさんが着ていた時代に人気がありました。その頃は1960年代、70 年代リバイバルのデザインだったのですが、それがまた再燃しています。当時と違うのは、90 年代に売れていたのは日本のライセンス商品でしたが、今は完全にインポートのラグジュアリーなラインです。
近未来的なデザインとワンポイント入ったロゴがポイントの[courreges]。
コート ¥84,900 / ニットタンクトップ(紺) ¥17,600 / キャミソール スタッフ私物
― 何かブランドにも変化はあったのでしょうか。
G : 2020 年に[ルイ・ヴィトン]から来たニコラ・デ・フェリーチェという方がアーティスティックディレクターになって、大きく風向きが変わりましたね。
― リブランディングに成功したわけですね。他にはありますか?
K : 最近、私がいる福岡パルコ店でも人気を顕著に感じるのは[ディーゼル]です。福岡は韓国からの旅行者も非常に多い街なのですが、日本の方含めて[ディーゼル]のショッパーを持って来店される方が増えたように感じます。
2020 年に[Y/project]のグレン・マーティンスによりリブランディングした[DIESEL]。現代によみがえった「D」ロゴが目印。
デニムジャケット ¥29,700 / 半袖トップス ¥15,200 / ワンピース ¥9,200
G : [ディーゼル]も[ワイ・プロジェクト]から来たグレン・マーティンスがクリエイティブディレクターになってかなり変化を感じます。特にロゴものが人気ですね。やはり全体的にロゴが印象的なブランドの人気が高くて、[ア・ベイシング・エイプ]もそのひとつです。
―[ベイプ]の人気にもK-POPの影響がありますか?
K : NewJeansという若いアイドルグループが、ミュージックビデオでも[ベイプ]を着て登場したんですよ。もともと[ベイプ]の人気はありましたが、“インスタ映え” 的な要素でもロゴものの強さを感じます。
― 日本ブランドも改めてK-POPトレンドの潮流の中に入っているんですね。
G :同じ日本ブランドでは、[ヒステリックグラマー]も人気が再燃しています。ブランド側もリバイバルトレンドを意識されているのか、80 年代、90 年代のかなり昔のデザインやタグを復活させていますね。
K : デザイナーのキコ・コスタディノフとのコラボレーションなど、新しい取り組みも印象的でしたね。
G : あとは日本ブランドではないですが、[ヴィヴィアン・ウエストウッド]もK-POPトレンドから人気が再燃している印象です。
90 年代や青文字スタイルを彷彿とさせる[A BATHING APE]や[Vivienne Westwood]も衣装で人気アイドルが着用し、再注目。
T シャツA BATHING APE ¥3,400 / ニット Vivienne Westwood ¥17,800 / スカートVivienne Westwood ¥10,600
― 先日、デザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドさんがお亡くなりになりましたが、そういう影響もあるのでしょうか?
G : Z 世代の方々はそういうことは全く気にされていないと思いますね。あくまでもデザインやブランドイメージ重視なのだと思います。
よりヘルシーに、 自由な自己表現を感じる着こなしに
ブランドの魅力はそのままに、Y2Kトレンドからリバイバルの勢いがある[HYSTERIC GLAMOUR]。
ブルゾン ¥26,600 / ニット ¥20,400 / パンツ ¥9,200
― 数々のリバイバルトレンドのブランドが挙がりましたが、当時と何か着こなしの面での違いはありますか。
G : 当時よりもスポーティ、ヘルシーさの面が違うと感じます。私たちの時代の“ 肌見せ” は、どちらかというとセクシー路線だったりギャルの要素も入っていましたが、今は足元をスニーカーで合わせたり、健康的な“ 肌見せ” になっていると思います。
K : 今は当時よりも「自分を表現する」ものとして着ている印象があります。ジェンダーレスでもあるし、全体的にコーディネートも自由になってきているなあと感じますね。
― 今回挙げてもらったようなブランドは、RAGTAGでも取り扱いは増えていますか?
G : まだ完全に浸透しているわけではないですが、探している方は確実に増えています。お買い取りに関しても、しばらく前に比べるとかなり変わってきています。
K : 昔のものを持ち込まれる方もいらっしゃいますよね。少し前まではお買い取りできなかったものも、状態が良ければお値段が付くものもあると思いますので、ぜひ拝見したいですね。