なぜ人々はこんなにも[Needles]に魅了されるのか…

なぜ人々はこんなにも[Needles]に魅了されるのか…

Buyer's VOICE 

COLUMN

2023.08.02

こんにちは!RAGTAG渋谷店の望月です。
国内外で人気を馳せる[ニードルス]の魅力について熱く語っていきたいと思います。
かなり人気のブランドなので、「そんなの知っているよ」という方も多いかもしれませんが、「ネペンテス」オタクで[ニードルス]ラバーでもある私から、ぜひみなさまの心に刺さる話を展開出来れば幸いです。

MOCHIZUKI

Profile

MOCHIZUKI

渋谷店 / バイヤー

生粋の服バカを続けて10数年が経ちました。カジュアル、ストリートからモードブランドまで幅広く足を突っ込み続けております。40歳を迎えようとしている今もなお服への愛は止まりません。昨今はネペンテス系ブランドの熱が再燃して、Engineered GarmentsやNeedles、South2west8を中心にスタイリングをしております。元々古着も好きなため、MILITARYのアイテムやPOSTOVERALLSなど老舗ブランドにも目がないです。実はMaison MargielaやCAROL CHRISTIAN POELLといったアルチザンブランドにはまっていた20代の若気の至りもあるのでそのあたりのお話もガッツリ出来ます。是非ご来店された際には服の話を熱く語りましょう!!

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    [ニードルス]誕生秘話と「ネペンテス」との関係

    ネペンテスタグ

     

    [ニードルス]を語るにあたって外せないのが、取り扱いショップでもある「ネペンテス」の存在。

     

    [ニードルス]のデザイナー清水慶三は「ネペンテス」の経営者でもあります。

    そんな「ネペンテス」は1988年に発足したセレクトショップで、今も人気の名高い老舗セレクトショップの一つです。

    「ネペンテス」では、いくつかのオリジナルブランドを独自で制作、販売しており、[ニードルス]をはじめ、[エンジニアドガーメンツ]、[サウス2ウエスト8]、[エーアイイー]、[アールアンドティー]、[ロドリリオン]がその代表ブランドです。

    ネペンテス集合

    〈左から[エーアイイー]、[ニードルス]、[エンジニアドガーメンツ]、[サウス2ウエスト8]〉

     

    「ネペンテス」は、特にその中でも中核を担うブランドの一つである[エンジニアドガーメンツ]を手掛けるデザイナーの鈴木大器と二人でスタートし、主にアメリカルーツの買い付け品のセレクト、販売を行い、現在に至ります。

     

    昨今は、ほぼオリジナルブランドをメインで販売しておりますが、以前は多くのセレクト商品が展開されていました。例えば、今でこそ有名な[トッズ]のドライビングシューズを初めて日本で販売したお店も「ネペンテス」でした。

    EGジャケット

    〈鈴木大器の手がける[エンジニアドガーメンツ]の看板アイテムでもある“ベッドフォードジャケット”〉

    余談ですが、[ナンバーナイン]や[タカヒロミヤシタザソロイスト]で有名なデザイナー 宮下貴裕も、実はこの「ネペンテス」の企画、プレスをして独立をされての今があります。

     

    この前置き一つとっても、「ネペンテス」がすごい店だということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

    「ネペンテス」の前身「レッドウッド」の存在

    「ネペンテス」の前身となるショップが、東京・渋谷にある「レッドウッド」というお店。主にアメリカ買い付けのセレクトショップで、1979年創業の名店です。「レッドウッド」と「ネペンテス」の蘊蓄は色々ありますが、話が長くなってしまうので、今回は少しだけ。

    この「レッドウッド」、実は[リーボック]を初めてセレクトしたショップなんです。

    靴

    〈当時は国内で目にすることは珍しかった[トッズ]と[リーボック]〉

    まだ日本代理店や日本法人のない、セレクトされた[リーボック]を山本耀司が買っていたというエピソードでも十分にお酒が飲めそうです。と、この辺りは語りだしたらキリがないので、そのあたりは直接私に聞いてください(笑)。

    [ニードルス]について

    ブランドタグ

     

    さてそろそろ本題に…。1989年に「ネペンテス」のオリジナルブランドとして誕生したのが[ニードルス]。

     

    針を意味する“NEEDLE”と暗に「“Need-less”(必要以上のものはいらない)」との意味が込められた二つの単語がブランドネームの由来です。ブランドネームからも服への敬愛とこだわりが感じられますね。

     

    [ニードルス]というブランドで思い浮かぶのは、トラックパンツやパピヨン(蝶の刺繍)という方も多いのではないでしょうか?あとは派手な印象の柄物の印象が強いですかね。実際そうした癖のあるテキスタイルやデザインが[ニードルス]の代表アイテムともいえます。

    ニードルス集合

    〈[ニードルス]のアイテムは特徴的なテキスタイルが多くみられる〉

    しかしながら、デザインやルーツの軸となる部分には、冒頭で小話をしたアメリカ買い付け時代の背景、“アイビー”や“ヴァン”といった王道のルックが根底にあり、それを音楽や映画が好きな清水慶三がエッセンスとして作り上げたアイテムこそが、実は[ニードルス]の醍醐味。

     

    そうしたカルチャー色の強い洋服を様々な視点から着崩す、それがデザイナーの提案する本来の[ニードルス]スタイルなのです。

    [ニードルス]のトラックパンツ

    PT集合

     

    定番でロングセラー、一番人気ともいえるアイテム、それがトラックパンツです。

    トラックパンツのスタートは2008年の春夏コレクション。

     

    山梨の田舎の高校で育った清水慶三が高校時代に出会ったジャージがルーツとなっています。

     

    当時は「POEPYE」の紙面などで[フィラ]や[セルジオ・タッキーニ]のジャージが一世を風靡した時代でした。

    その中でも元ネタとなったのが、同時期に発売された[アディダス]の“ATP(Association for Tennis Professionals = 男子プロテニス協会)のセットアップ”。ニューヨークのヒップホップグループ「Run-D.M.C.」のイメージも強いのではないでしょうか。

    アディダス

    〈元ネタとなった[アディダス]のトラックパンツ〉

    いつかこんなカッコいい服を作ってみたいと、山梨から東京まで服を買いに出向く、そんな青春時代を過ごしたそうです。

     

    そして時は経ち「レッドウッド」時代にアメリカ映画で見た、[アディダス]のトラックパンツにテーラードジャケットを羽織って子どもの野球に行く父親が頭に残り、高校時代の憧れのアイテムとクロスオーバーされます。

     

    そして、トラックパンツのヒントとなったのが、アメリカ買い付けの際に古着屋で見つけた子供用のトラックスーツ。“ATP”の流行りに便乗して作られたブート物(フェイク品のようなもの)を古着屋で発見し、それが3本ラインではなく、5本ラインだった(潔いパクリ具合、それがすごく新鮮に映ったそうです)。これを大人用に作ったら良いじゃないか、そして[アディダス]マークに代わるワンポイントが欲しいと、「パピヨン」という好きな映画から蝶のマークを採用しよう、とこんな流れです。

     

    実は[ニードルス]のパピヨンマークは、トラックパンツのアイコンとして作られたものだったのです。

    ロゴ

     

    今では飛ぶ鳥を落とす勢いの[ニードルス]トラックシリーズですが、発売当初は信じられないくらい売れていなかったそうです。それでも清水慶三ただ一人は、トラックパンツを偏愛し、毎日着続けました。

     

    いつしか10年間履き続けたこだわりのアイテムは長い年月を経て、多くのファッション関係者やミュージシャンに支持されるようになります。音楽や映画からインスピレーションを受けているデザインが、業界全体には受け入れられやすく、一度火がついてからはあっという間に自然発生のように広まっていきました。

     

    記事画像

     

    「ビームス」の別注やスタイリストが履いた影響などなど、特にコロナ禍でインスタグラムが普及したことで、“#needlestrackpants”のタグが国内外で人気に、さらにはA$AP Rockyのように影響力の強いアーティストが好きだと公言したことで過去最高の盛り上がりを見せました。

     

    日本人では、滝藤賢一や菅田将暉、あいみょんなどが引き金役となったのではないでしょうか。一時期は発売と同時にオンラインから一瞬で消えてしまうほどの人気となりました。

     

    誕生秘話から人気の話まで聞くと集めたくなってしまいますね。

    トラックパンツは、元々ストレートのみの展開でしたが、細身のナローやワイドシルエットのヒザデル、ブーツカット、裾にジップの付きのものとデザインバリエーションが増えました。

    サイドライン

     

    またデザインのメインとなるサイドラインのニットのような生地は、日本でももう一台しかない織機を使用しており、独特の風合いはそこから生まれています。

    さらにカラーリングも二度と同じものが出ることはなく、すべて異なる色、配色となっています。

     

    発売から15年、インライン、直営限定、各ショップの別注やコラボなどを含めると相当数のトラックパンツが存在し、[ニードルス]好きのコレクション欲をくすぐるのは言うまでありません。

    最後に...

    アイキャッチ

     

    流行りという視点で見てしまうと一過性のブランドやアイコニックなアイテムとして飽きてしまいそうな[ニードルス]やトラックパンツですが、こうして歴史を知り、デザイナーのルーツを知り、背景を知ることでどんどんはまってしまうのが[ニードルス]と「ネペンテス」ブランドの最大の魅力です。

     

    実際にメインのターゲット層は、実はみなさんのご想像よりも高く、私自身が個人でインスタグラムをフォローしている方々も大体は30代~50代くらいの世代です。年を重ねて自分の年輪が増していき、渋さのある[ニードルス]に袖を通すことで、よりその服の持つ妖艶さや色気に拍車がかかる最高のブランドです。

     

    ぜひみなさまも、片足からゆっくり、そしてどっぷりと[ニードルス]や「ネペンテス」ブランドの沼にはまりましょう。

     

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