
「world creator project×RequaL≡」POP UP イベント開催記念 RequaL≡ インタビュー
「常に新しさは、過去への階段を下っていく作業から生まれるもの」 RequaL≡土居哲也と古着の親密な関係
株式会社ワールドが国内コレクションブランドのデザイナー達と共同で商品開発を行うプロジェクト「WORLD CREATORS PROJECT」。第一弾は、RAGTAGの古着を利用したアップサイクルをテーマに、[RequaL≡(リコール)]の土居哲也さんと共同で合計4型のアイテムを販売します。本企画を二つ返事で引き受けたという土居さんが感じる古着の魅力について、そこから今回リメイクする上で考えた[RequaL≡]のデザインに対する想いを伺いました。
Profile
土居哲也
RequaL≡ / デザイナー
ロックバンド・ジャンヌダルク(Janne Da Arc)への憧れをきっかけにファッションを志す。東京モード学園/文化ファッション大学院大学卒業後、ここのがっこう(coconogacco)/Meにてファッションデザインに従事。2016年、リコール(RequaL≡)として活動を開始。第34回イエール国際モードフェスティバル モード部門Honourable mention from the jury受賞。2020年秋冬コレクションより東京コレクション参加。東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD) 2020 WINNER big design award ファイナリスト。
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― 今回のプロジェクトで発表されたアイテムは、すべてRAGTAGの倉庫から選ばれた古着から作っているそうですね。巨大な倉庫からどのようにアイテムを選定していったのでしょうか?
倉庫に行ったのは1回だけだったのですが、山積みの段ボール20個から約1000着以上の服を選定するところから始まりました。と言っても膨大なアイテムの量なので、まずはどのような選定方法が[RequaL≡]らしい視点になるか考えて。結果、服飾史の文脈上にあるスタイルをフューチャーする[RequaL≡]の服作りを応用する形で、とにかくパーカー、ジャケット、デニムなどアイテム別で分けていく作業を倉庫では行いましたね。

― 1日だけでそんな膨大なアイテム数と情報量を仕分けするには、ある程度古着に馴染みがないとできないような気がしますが。
そうですね。今回プロジェクトを引き受けるきっかけとして、ブランドを立ち上げる前に2年半ほど、ファッションブランド[HIDAKA]の日高さんのリサイクルビジネスを手伝っていたことがあります。そこで国内外のブランド物を1日漁る日々が続いていたこともあって、作業としては慣れていたかもしれません。もちろん個人的に古着がすごく好きだということも背景にあって、RequaL≡としても、21A/Wに古着のリメイクをテーマに「Re:use」というコレクションを発表していたので、今回お声かけいただいたときは二つ返事で引き受けましたね。
― ざっくりとアイテム別に選定していく中で、最終的にどのように4型のイメージが湧いてきたのでしょうか?
選定していく中で、ぼんやりと今季[RequaL≡]で発表したイメージを古着に転換できないか考えていきました。デザインのコンセプト名としては、「Re:shape」「Re:block」「Transformation」の3種類になります。「Re:shape」はパーカーとデニムパンツに使った手法、「Re:block」はスーツ、「Transformation」はデニムバックに用いました。「Re:shape」は横軸で「Re:block」は縦軸でリメイクすることによって、トータルコーディネートを組んだ時に統一感が出るようにしました。
― まずは「Re:shape」のアイテム2型から説明お願いします。

パーカーは、先日発表したばかりのコラボレーション[WILDSIDE YOHJI YAMAMOTO×RequaL≡]でも用いた手法になっていて、前後身頃両方で着用できる1枚になっています。デニムは、僕の世代がY2Kど真ん中ということもあり、当時浜崎あゆみさんや倖田來未さんなどがよくダブルウエストジーンズを履いてたことを覚えていて。大人になった時にそれをどう提案し直せるか考えた時に、そのまま履けばハイウエスト、めくっても履けるシルエットの変化を楽しめるようなアイテムを考えました。

― 「Re:block」のジャケットについて教えてください。

左右で異なるスーツの素材を組み合わせています。今回のプロジェクトの根幹にもある、不要品とされていたものもデザインが一手間加わることで新しく生まれ変われるという「Re:useの再定義」を表現したアイテムになりますね。そこに内側にベルトを通すことで、スタイリングでも自由に遊べるようにしました。
― バッグには、パンツと同じくデニム素材が使われていますね。

古着を見ていく中で黒のアイテムがダントツで多かったのですが、ついでデニムパンツの量がありました。ここでも[RequaL≡]がデビュー当時から表現してきた手法のひとつとして、本来の形から異なるアイテムに変形させる「Transformation」を通してバッグを作りました。着け外し可能なミニポケットも付けています。

― これまでRequaL≡で発表してきた服作りのコンセプトを古着と組み合わせることで、RequaL≡らしさを形にしていったんですね。プロジェクトを通して、新鮮に感じたことはありますか?
ワールドさんからのアイデアで、通常ブランドを通して届く層よりもマスなターゲットを意識したことですね。今までもリメイクで実験的な服作りはしてきましたが、今回そういった意識で実用的なリメイクに取り組んだことは、ある意味[RequaL≡]にとって初めての試みになったと思います。
― 土居さんにとって古着の魅力は、一体どのように映っていますか?
常に新しさは、過去への階段を下っていく作業から生まれるものだと考えているので、服飾史の文脈を語る古着の存在は大切だと思っています。ブランドとしても立ち上げ当初から、新しいものを作る必要はなく、古いものの価値を再構築することを一貫して試みてきました。例えば、日本語では「ファッション」のことを「服飾」と言いますが、中国語では「時装」と書く通り、1着の服の向こう側にはさまざまな人々の人生やあり方が含まれていくと思うんです。それがファッションデザインにおいて大事なことであり、ファッションの面白みでもあると考えていて。個々人が感じる時間や概念の捉え方が異なる現代社会において、例えそれが他人から見て間違いや失敗だと見えていても、みんな違ってみんないいという考え方を[RequaL≡]としては今後も体現していきたいと思います。

― 今回発表したアイテムしかり[RequaL≡]がつくる服には、そういった社会の規定と例えズレていても自分を認められるような想いを込められていると。
そうですね。[RequaL≡]の服が、現代社会で少し生きづらい人たちにとっての救いになったら嬉しいです。僕のルーツとしても、幼少期からどこか社会に馴染めなかったり、どこにも属せない孤独の感覚を持っていて、そんな時に出会ったファッションが救いになった体験があります。そうした人たちの生き方や未来を後押しできるような服づくりをこれからも続けていきたいです。
― 今回の取り組みを体験して、今後挑戦したいことはありますか?
今回だけで終わらせるのはなく、第二弾も行いたいですね。実は倉庫で服を選定している中で、レディースアイテムの量が多かったことから、当初のデザイン案ではレディースウェアも考えていたんです。今回用いたコンセプトは、メンズ・レディース性別関係なく色々なアイテムにも応用できる引き出しだと思うの、本質的に過剰在庫に対してアプローチするべく、今後も長期的に継続できたら嬉しいです。
■「world creator project×RequaL≡」POP UPイベント 開催概要

開催期間:2022年11月26日(土)〜12月4日(日)
開催場所:RAGTAG原宿店 1F
▽world creator project Instagram
https://www.instagram.com/world_creator_project/
▽world creator project Official site
https://world-creator-project.myshopify.com/

Photo by Keita Goto
Styling by Nobuyuki Ida
Illustration by Tetsuya Doi
Edit, Text by Yoshiko Kurata