
No.05 「1985年生まれのブランド」ドリスヴァンノッテン
BACK TO 1985|
イマに続く1985年の40のコト。
RAGTAG創業と同じ1985年に誕生したブランドの魅力を、RAGTAGのバイヤーがご紹介。
今回は[DRIES VAN NOTEN(ドリスヴァンノッテン)]について。
photo : TAWARA(magNese) / edit : Yukihisa Takei(HIGHVISION)

Profile
ENDO
原宿店 / バイヤー
COMME des GARCONSやnoir kei ninomiyaを中心に、時代が変わっても揺らぐことのない美しさと、強さの中にも繊細さを感じるブランドに惹かれます。これまでドメスティックからストリート、インポートブランドまで幅広く触れてきましたので、ご来店の際にはお好きなブランドやお洋服のお話で盛り上がれたら嬉しいです。
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普遍的な美しさを愛でる心を教えてくれたブランド

[ドリスヴァンノッテン]が得意とする、色彩豊かなプリントが魅力的なコート。一枚羽織るだけで様になるアイテム。
1985年のブランド創業から今年で40年。これまで長きに渡りブランドを率いてきたデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテンが、2024年3月に引退を発表しました。新クリエイティブディレクターを迎え、ブランドとして新たなチャプターに突入した[ドリスヴァンノッテン]。ドリスの美しいものへの愛と、服作りに真摯に向き合ってきたその姿勢は、これまでたくさんのファッションラバーを魅了し続けてきました。
今回は、これまで[ドリスヴァンノッテン]が発表してきた数々のコレクションの中から、特に私が忘れることのできない名作シーズンをピックアップし、これまでの40年の歩みの1ページをめくってみたいと思います。
コレクション発表100回記念/2017年秋冬コレクション

2017年秋冬を象徴する、アーカイブプリントと幾何学模様を掛け合わせたオリジナルファブリックのシャツ。
私の思い出の1ページでもある、[ドリスヴァンノッテン]として記念すべき100回目のコレクション発表となった2017年秋冬コレクションは、これまでのクリエイションの集大成ともいえる、節目にふさわしい華やかなコレクションでした。
これまでに手掛けてきた様々なアーカイブプリントに、新たに幾何学模様を重ねたオリジナルファブリックで仕立てられたアイテムの数々。ショーでは歴代ランウェイを歩いてきたモデルが登場し、懐古的な中にも新しさが感じられる、長年のファンにとってもメモリアルなコレクションとなりました。
私もこのシーズンは、2011年秋冬コレクションで登場した盆栽柄ファブリックのジャケットと、水墨画のようなパターンが美しい2009年秋冬コレクションのアーカイブファブリックのパンツを受注会で購入し、今でも大切に着ています。
何年経っても、何度着ても素敵と思える、それが私にとっての[ドリスヴァンノッテン]の魅力。トレンドや時代がいくら変わっても揺らぐことのない、普遍的な美しさを愛でる心を教えてくれたのがこのブランドです。
クリスチャン・ラクロワとの共創/2020年春夏コレクション

ヴィヴィッドな色づかいに大ぶりな花柄。両ブランドの魅力が詰まった、クリスチャン・ラクロワとのコラボレーションアイテム。
これまで数々のコラボレーションや名作コレクションを発表し、私たちを楽しませてくれた[ドリスヴァンノッテン]ですが、これほどまでにショー発表直後の興奮が冷めなかったコレクションはないかもしれません。
2020年春夏コレクションは、80年代を代表するオートクチュールデザイナー、クリスチャン・ラクロワと共に作り上げた前代未聞のコレクション。コラボレーションという名目ではなく、あくまでも共作として、ドリスが直接ラクロワに電話でオファーし2人で作り上げたという、後世に語り継ぎたい伝説のコレクションです。
ドリスとラクロワそれぞれが得意とする鮮やかな色使い、花柄やアニマル柄などのオリジナルファブリックの数々、ジャガードや刺繍、ラッフルなどをふんだんに使用した、ロマンティックでデコラティブなアイテムが多数発表されました。
多彩な色使いと、絶妙なバランス感覚の柄と柄の掛け合わせは[ドリスヴァンノッテン]の魅力のひとつですが、そこにラクロワのエネルギッシュな力強さが相まって、華やかなムード全開のコレクションとなりました。
「ファッションを純粋に楽しんでいた80年代、あの時代の情熱を現代に呼び戻す。」そんな2人の情熱が溢れんばかりのシーズンです。当時私は、同シーズンを象徴するフラワープリントのカフタンドレスを購入。この先もずっと大切に着ていきたい、お気に入りの一着です。
新たなチャプターへ/新クリエイティブ・ディレクター、ジュリアン・クロスナー

繊細かつゴージャスな刺繍やビジューづかいも、ドリスらしさを存分に感じられるディテール。
2024年3月18日、ドリス・ヴァン・ノッテンが自身のブランドのデザイナーを退任することを発表しました。ドリスが手掛ける最後のコレクションとなったのは2025年春夏メンズコレクション。退任後はデザインチームが引き継いだ後、後任デザイナーとして、2018年から[ドリスヴァンノッテン]のチームに加わりウィメンズコレクションのデザインを担当していた、ジュリアン・クロスナーが新クリエイティブ・ディレクターとして任命されました。
昨今のファッション業界では目まぐるしくデザイナー交代が行われ、いかに名のあるデザイナーを登用しリブランディングを図るかが業界の大きなトピックになっていますが、今回の[ドリスヴァンノッテン]のデザイナー交代はいわゆる社内昇格。ドリスがこれまで大きな愛を注いできた自身のブランドを、この先の未来に繋げていくために選任した、絶大な信頼を置いている人物なのだとわかります。
ジュリアン・クロスナーが就任して初めてのコレクション発表となったのが2025年秋冬メンズコレクションのルックブック。これまでのドリスのファンは、一体どんな方向性になるのか、不安と期待が入り混じっていたと思います。そんな不安をよそに、発表されたコレクションはあまりにも[ドリスヴァンノッテン]そのもの。これほどまでにシームレスなデザイナー交代は他に類を見ません。
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」

エスニックな幾何学模様のジャガードがまぶしい、2015年春夏のスカート
不易流行という言葉がありますが、まさにジュリアン・クロスナーは、新たなチャプターでドリスのDNAを確実に未来に繋いでいく存在。今後もどんなデザインで私たちを楽しませてくれるのか、楽しみですね。
私たちRAGTAGは、様々なブランドの歴史の1ページをめくりながら、お気に入りの一着や、新しい自分を発見することができる場所。あの時欲しかったアーカイブアイテムを見つけるのも楽しみのひとつです。時代が移り変わっても色褪せないブランドの魅力に、ぜひお気軽に触れてみてください。