No.28 「1985年生まれの名品たち。」PatagoniaのシンチラスナップT

No.28 「1985年生まれの名品たち。」PatagoniaのシンチラスナップT

BACK TO 1985|
イマに続く1985年の40のコト。

RAGTAG 40th

2025.12.29

1985年に生まれて、現在もその輝きの失せない名品を、RAGTAGのバイヤーがご紹介。
今回は[パタゴニア]のシンチラ スナップTについて。

text : 心斎橋店 店長 YOSHIOKA

photo : TAWARA(magNese) / edit : Yukihisa Takei(HIGHVISION)

YOSHIOKA

Profile

YOSHIOKA

心斎橋店 / 店長

RAGTAG一筋20年。モードブランドからストリートブランドまで幅広いテイストが大好きです。自身のスタイリングはアメリカンカジュアルに落ち着きましたが、素材や縫製、生産背景にこだわった職人気質の高い世界中のクラシックブランドの魅力を改めて研究中です。

index

    [パタゴニア]の “シンチラ” の由来と “スナップ T”

    数々の傑作を持つ[パタゴニア]の中でもよく知られている“シンチラ”。すっかり定着している感もありますが、ところで “Synchilla(シンチラ)” という名称の由来はご存知でしょうか。これは[パタゴニア]が開発したフリース生地に付けた名前で、シンセティック(合成繊維)とチンチラ(動物)を組み合わせた造語。他のブランドが製造する多数のフリース製品との差別化ができていますし、何より自然や動物を愛する[パタゴニア]らしいネーミングで、名前だけでも製品に愛着がわきますよね。

     

    そして1985年に誕生した “スナップT” は、シンチラを使用した最もポピュラーなトップスです。スナップボタンを留めるとスタンドカラーになって首元までしっかりと温かく、ボタンを1~2個外すと襟のような形となり、街着としてもスタイリッシュな印象で着用できます。さらに4つ目のボタンまで外すと前身頃を広く開けることが出来るため、脱ぎ着が容易なことも愛される理由のひとつかと思います。

     

    スタンドカラーデザインは、他ではフルジップのジャケットタイプの製品が多い中、[パタゴニア]の “シンチラスナップT” はあくまでもTシャツ感覚で気軽に着用できるインナーとしてのデザイン性を兼ね備えている点もポイント。袖口と裾はパイピング仕立てで程よいホールド感があり、着心地を良くしているなど、細部まで考え抜かれた作りになっているのも特長です。

     

    “シンチラスナップT” は[パタゴニア]の数ある製品の中でも最もポピュラーで、アウトドアウェアとして誕生して40年が経ってもその形はほとんど変わっておらず、今ではファッションアイテムとしても愛され続けています。

    フリースの特許を取得しなかった[パタゴニア]

    PatagoniaシンチラスナップT

    今やファッションやライフスタイルの中で欠かせない存在にもなっているフリース。実はこの素材は[パタゴニア]が開発した画期的な素材です。

     

    [パタゴニア]は登山家のイヴォン・シュイナードが設立したブランドであり、製品づくりの理念としてすべての製品は実用的で長く使えるギア(道具)であることを前提としています。“シンチラ” が誕生する以前、登山界全体では、綿、羊毛、羽毛など、水分を吸ってしまう素材の重ね着に頼っていました。そこで[パタゴニア]では、保温性はあるが水分は吸わない機能を持つ、理想的な素材を追求していました。

     

    そして1984年、ポリエステル生地を使った人工毛皮などを製造販売していたモルデン・ミルズ(現在のポーラテック)社との協働開発の末に誕生したのが“シンチラ”です。“シンチラ” はそれまでのウール素材と同等の保温性を持ちながら、はるかに軽量であり、速乾性と耐久性を兼ね備えていました。

     

    [パタゴニア]が開発したこのフリース素材は、現在では他のアウトドアブランドをはじめ、ファストファッション製品にまで広く普及しています。その理由は[パタゴニア]が“シンチラ”の素材であるフリースに対して特許を取得しなかったからです。

     

    [パタゴニア]の理念は、「最高の製品を作り、環境への悪影響を最小限に抑え、ビジネスを手段として環境問題に取り組む」こと。「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げて、最高の機能性と環境持続可能性を両立した製品開発に注力しています。[パタゴニア]がフリース生地に対して特許を取らなかったのは、他のアウトドアブランドに技術を公開してより多くの人に普及させようとしたためだったのです。

    ファッションコラボを行わない姿勢から生まれる魅力

    PatagoniaシンチラスナップT

    [パタゴニア]はファッション性においても独自の魅力があります。それは同じアメリカ発のアウトドアブランド[THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)]と比較してみることで浮かび上がってくる違いからも読み取れます。

     

    実は[パタゴニア]と[ザ・ノース・フェイス]の創業者同士は親友でした。創業前に二人で南米チリ・アルゼンチンにまたがる「パタゴニア」と呼ばれるエリアを旅した話も非常に有名ですが、そんな原点をともにする[ザ・ノース・フェイス]は、現在では[パタゴニア]以上に多くの方から人気があります。それは[ザ・ノース・フェイス]が、タウンユースを前提にしたカジュアルなアパレルラインにも注力していることも大きいと思います。

     

    また[ザ・ノース・フェイス]はファッション性や話題性も重視し、近年では[Supreme(シュプリーム)]や[UNDERCOVER(アンダーカバー)]などのストリートブランド、[COMME des GARCONS(コム デ ギャルソン)]、[Maison Margiela(メゾンマルジェラ)]などのデザイナーズブランドとのコラボレーションを積極的に行っています。

     

    逆に[パタゴニア]はあえてそのようなコラボレーションを行いませんし、流行に沿ったデザインを多数販売することはありません。比較すると[パタゴニア]は一見退屈な商品のようにも見えますが、長い目で見ると、一時的な流行に流されずに自分の感性に合わせたスタイリングを長く楽しむことができる唯一無二の存在にもなっており、それが逆説的に[パタゴニア]のファッションとしての魅力にもなっています。

    古着になっても魅力的な[パタゴニア]

    [パタゴニア]の製品が長く愛される理由は、クオリティとして優れていることだけでなく、企業としての姿勢にもあるのかと思います。特にアパレル業界に衝撃を与えたのは、2013年から始まった「Worn Wear(ウォーンウェア)」という取り組み。これは企業として新品を買うことだけを推奨するのではなく、衣類を修理して寿命を延ばしたり、リサイクル販売をしたりすることで、消費を減らすことをコンセプトに置いた取り組みです。日本でも2019年より本格的にこの取り組みが始まり、今では当社、RAGTAGと協業して実店舗や野外イベントなどを通して古着の回収と販売も行っています。

     

    [パタゴニア]の服を長年愛してきた私自身も、この取り組みの一員として[パタゴニア]の店舗に立って古着のお買い取りの仕事をすることがあります。その中で驚いたのは、[パタゴニア]の服を好きなお客様は、何年も前に買った服を修理して使い続けたり、自分の子供に引き継いで世代を超えて愛用したりしている人が多いということです。

     

    そして[パタゴニア]の愛用者はほぼ全員が “シンチラ” を所有しています。古着のお買い取りというシーンの中でも “シンチラ” はデザインも普遍的で、丈夫で長く愛用できる最高の服なのだと、改めて実感しました。

     

    つい先日も[パタゴニア]にて、スタッフが最新のウェアではなく、親のお下がりの“シンチラスナップT”を満足げに着用して接客している姿がとてもかっこよく見えて、ファッションの本質的な価値を改めて考えさせられました。

     

    “シンチラ” を初めて買う方へ

    PatagoniaシンチラスナップT

    “シンチラ” シリーズは毎年同じデザインのものが店頭に並びます。嬉しいことに毎年定番で変わらない色目のほかに、その年にしか販売しないようなカラーパレットも多く存在しますので、周りと差をつけたいのであれば、[パタゴニア]らしい鮮やかなレアカラーに手を伸ばしてもいいかと思います。

     

    デザイン性は普遍的なので、どれだけ色目が派手であっても決して時代遅れに感じられたり、着られなくなったりする心配はありません。その証拠に、今では90年代に発売された “シンチラスナップT” の古着の価格が現行の商品以上に高まっているものもあります。長年の着用で毛羽立ちが出たり、多少の型崩れが出たりしているものもありますが、30年以上経っても色褪せず機能性も損なわない完成度の高いウェアであるからこそ、無数のシンチラが価値あるものとして古着市場では循環しています。

     

    “シンチラ” を初めて買うなら古着の1枚がおすすめです。すべてがヴィンテージとして高騰しているわけではないので、定価の半額ほどで高品質の “シンチラスナップT” を手に入れることができます。そしてリユース品の “シンチラ” を着ることは、「Worn Wear」を提唱する[パタゴニア]の理念を体現することにもなります。

     

    一方、近年の[パタゴニア]の “シンチラ” シリーズの新作トレンドは、ずばり「リバイバル」です。古着市場で盛り上がりを見せる90年代に発売された人気のカラーパレットの再販売から目が離せません。

     

    当時のモデルを全く知らない人でも魅力を感じられるような、[パタゴニア]の作るクラシックでなんとなく心がほっこりするような配色は1枚取り入れるだけで言葉では説明ができない普遍的なかっこよさがあります。特に2025年秋冬の “レトロX” のコレクション内のナチュラルカラーは、ヴィンテージ市場でもオリジナルモデルにおいて人気が常に高いカラーなのでおススメです。

     

    この記事を読んでくださっている方はおそらく[パタゴニア]がお好きな方が多いと思いますが、もしまだ “シンチラスナップT” を持っていないのであれば、新品でも古着でも自分のお気に入りの[パタゴニア]の“シンチラスナップT”を1枚手に入れてみてください。

     

    必ず今までに感じたことのない、ファッションへの満足感と価値観に触れることができると思います。

     

    RAGTAG 40th スペシャルサイトオープン!

    OTHER POST こちらの記事もおすすめです

    BACK TO LIST

    PICK UP BRAND このブランドの記事もおすすめです

    VIEW MORE

    RAGTAG Online オンラインショップでアイテムをチェック

    VIEW MORE