No.39 「1985年生まれの履歴書」SAORI UEKIデザイナー 植木沙織さん

No.39 「1985年生まれの履歴書」SAORI UEKIデザイナー 植木沙織さん

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イマに続く1985年の40のコト。

RAGTAG 40th

2026.03.16

RAGTAG40周年にちなみ、ファッション業界で活躍する1985年生まれの方にお話を聞く 「1985年生まれの履歴書」。今回は元[SREU(スリュー)]のデザイナーで、現在は自身のブランド [SAORI UEKI(サオリウエキ)]のデザイナーとして活躍する、植木沙織さんに登場いただきます。古着のリメイクやアップサイクルの手法において、高いクリエイティビティを発揮する、植木さんのデザインが生まれた背景に迫ります。

interview & text : 武井幸久(HIGHVISION)
photo : TAWARA(magNese)

植木沙織

Profile

植木沙織

1985年 北海道生まれ。文化ファッション大学院大学を卒業後、ニットOEMのメーカー、国内大手カジュアルブランドのVMDを経て、2016年にアテノイに入社し、古着リメイクブランド[フルギニレース]をスタート。2019年に[SREU]へと名称変更し、リブランディングを経て国内外のセレクトショップからも注目される。2023年に[SREU]を退任し、2024年より自身のブランド[SAORI UEKI]を始動。

index

    「ファッションのない街」に生まれて

    植木沙織さん

     

    [SAORI UEKI]のデザイナー、植木沙織さんが生み出す服は、古着のリメイクやアップサイクルを中心に、「再構築」したものも多く見られます。植木さん自身のブランドは2025年SSシーズンにスタートしたばかりですが、前職でデザイナーを務めた[SREU(スリュー)]でそのスタイルは開花。現在も続くそのクリエイションに至るまでには、植木さん自身の生き方や、ファッションへの向き合い方が強く反映されています。

     

    「私は北海道の田舎の出身で、実家は米農家です。まわりは田んぼと畑だらけ。でもテレビは東京とほぼ同じものが流れていたので、やけに東京には詳しくて、何の根拠もないのに『私もいずれ東京に行くんだ』と漠然と考えていました。高校生の頃にファッションに興味を持ったきっかけは、兄が読んでいたメンズファッション誌。そこから女性誌も読むようになりましたが、載っている服は一番近くても札幌に行くしかありませんでしたし、そもそも高くて買えませんでした(笑)」

     

    植木さんがファッションのデザインを始めたきっかけは、そんな日々の中の些細なことがきっかけだったそうです。

     

    「雑誌で確か[Candy Stripper(キャンディストリッパー)]のシャツを見て欲しくなったのですが、そんなの近くに売ってないし、お小遣いもなかったので買えない(笑)。それで私がどうしたかと言うと、母親からミシンを借りて、家にあったシャツを自分で解体し、縫い直して似たようなものを作ることにしたんです。普段は21時には寝ていた私が、その日は熱中して朝になるまでやったことに自分でも驚きました。出来上がったものは未熟でしたけど、『ついに仕事にできるものを見つけた!』と興奮したんです」

    メーカー、フリーター、VMDへの流転

    植木沙織さん

     

    その後、植木さんは両親の反対を押し切って、東京の文化学園大学の短大に進学。結果的に短大から大学院まで6年間勉強し、パタンナーを目指す中で、自分が興味を持ったブランドへの就職を考え始めます。

     

    「当時私はパターンもやりながらデザインもしたいと考えていたので、それが叶えられそうな[COMME des GARÇONS(コム デ ギャルソン)]に就職することしか考えていませんでした。卒業を控えた頃、学校に[ギャルソン]の人事の方が来てくれて面談の機会あったのですが、『あなたにとっての服の美しさとは?』と聞かれた時に、自分はそれまで“カッコいいかどうか”でしか服に向き合っていなかったことに気付かされました。でも、自分はこの先も多分“カッコいいかどうか”でしか服は作れない、自分には向いていないと勝手に諦めて、学校が提案してくれたニットのOEMの会社に就職するんです。でも、自分はこの仕事を一生続けられることができないと感じ、2年で辞めてしまいました」

     

    ファッションデザインの仕事に失意した植木さんは、ここで大胆な選択をします。それは一度ファッションから離れて、「フリーター」としての生活を始めることでした。しかし、このフリーター生活の中で、植木さんの運命はまたファッションに引き寄せられていくことになります。

    SAORI UEKIのアイテム

     

    「駅前でのティッシュ配りを中心にバイト生活を始めたのですが、それだけでは暮らしていけないと思っていたところ受かったのが、大手カジュアルブランドの店頭アルバイトでした。ティッシュ配りのバイトも並行でやりながらスタッフとして働いていたのですが、ある日店長から『会社がVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング ※店頭のディスプレイなどをディレクションする仕事)社員を募集しているから、受けてみなよ』と言われたんです。最初は断っていたのですが、試験を受けたら通り、そこからそのブランドの社員VMDとして働き始めました」

     

    VMDの業務を始めた植木さんは、メキメキと頭角を表し、仕事に没頭した日々を送ります。

     

    「最初私はまだそのブランドを当時の世間の目と同じで“カッコ悪い”くらいに思っていたのですが(笑)、実際に社内でモノを見ていると、1500円の価格でもすごいクオリティのモノを作っていると感じるようになりました。だんだんVMDの仕事も自分の天職のように感じていたのですが、持病が悪化してしまい、仕方なくやめることにしたんです。結果的にその会社では5年働きました」

    さりげない一言から、[SREU]のデザイナーに

    植木沙織さん

     

    一時的に職を失った植木さんは、ファッションブランドを手がけていた大学院時代の同級生に「仕事を手伝って欲しい」と言われていたことを思い出し、連絡。その会社に入り、再び店頭のスタッフとして働き始めます。

     

    「そのお店ではリメイク古着をセレクトで売っていたのですが、ある時思わず『リメイクされた古着を仕入れるよりも、自分たちでリメイクして売った方が良くないか?』と言ってしまったんですね。じゃあやってみようということになったら売れ始めたので、[FURUGI-NI-LACE(フルギニレース=古着にレース)]というブランド名を付けました。変な名前ですけど、若手のセレクトショップのオーダーも付いて、売れたんですよ。ただ、今は[Marine Serre(マリン・セル)]とか、リメイクのブランドはいっぱいありますけど、昔からのセレクトショップのバイヤーの人からは、『アソート(※出来上がりがランダムなもの)のものなんて仕入れられない』と散々に言われていましたね」

    SAORI UEKIのアイテム

     

    偶然か運命か、植木さんはついに自分でデザインからパターン、そして縫製までも手がけるデザイナーに。高校生の頃にシャツを解体して縫い直した初期衝動が、そのまま仕事になった格好です。

     

    「だんだん海外でも売れ始めたので、名前を変えようということになったのが[SREU(スリュー)]。Sはサステナブル REはリサイクル・リメイクル、 Uはアップサイクルの頭文字です。そして国内の合同展示会に参加した時、たまたまなのか、『Colette(コレット)』のサラ・アンデルマンさんが主催の人に『このブランドいいね』と言ってくれたおかげで、そこから海外のショールームに出せるようになり、有名セレクトショップにも入るようになったりしたんです」

    SAORI UEKIのアイテム

     

    2019年頃からは、ファッション業界においても、サステナビリティへの対応が叫ばれていた時期。かなり早い段階から高いクオリティのアップサイクルによって人気ブランドとなっていた[SREU]は注目され、2020 SSシーズンにはRakuten Fashion Week Tokyoにおいてランウェイ形式でコレクションも発表。植木さんの名前も本格的にデザイナーとして広まり始めます。しかし[SREU]の服は、すべて植木さんによるリメイク品。売れれば売れるほど、植木さんは多忙な状況に追い込まれて行きます。

     

    「誰かに指示して作ってもらうという選択肢もあったのですが、やっぱり自分でやらないと納得できないんですよね。誰かに全部やってもらって、自分にとっては7割くらいの出来のものを、ユーザーの方に届けるのは失礼だなと思って自分でやっていました」

    自らのブランド[SAORI UEKI]を始動

    SAORI UEKIのアイテム

     

    しかし、[SREU]も波に乗り、服作りに多忙を極めていたある日、植木さんは再び自分を見つめ直す出来事に遭遇します。

     

    「ある日、なんとなく自分のブランドがメルカリで売られているのを見たんですね。私は『服が過剰になっているこの世の中をなんとかしたい!』とか、そこまでサステナビリティに対して強い想いがあるわけじゃないし、ただ単純にもう誰も着なくなったような服をリメイクしてカッコよくするのが得意な方だと思います。でも『あれだけ必死に作った服が、また誰かにとって不要になって、結果的にまた“ゴミ”を作っているのかも』と思い始めたら、ドッと疲れてしまい。新たな挑戦を求めて、会社に理由も告げて[SREU]を去ることにしたんです」

     

    そして植木さんは2025年SSシーズンに、自身のブランド [SAORI UEKI]を始動。現在は古着を素材に使うだけでなく、デッドストック生地や素材リサイクル生地を使った新たな生地を使うなどして、新たなブランド像を築きつつあります。特に、古着のTシャツを解体し、内側に生地を貼り合わせてキルティングにしたアウターなどは、植木さんのクリエイティビティと技術が融合したシグネチャー。現在はウィメンズブランドとして展開していますが、メンズからも好評で、よりユニセックスな立ち位置のブランドになっています。

    SAORI UEKIのアイテム

     

    「私が最初にファッションに出会ったのがメンズ雑誌だからなんですかね。結局今になっても服を『美しいかどうか』よりも『かっこいいかどうか』で作っていると自分で思います」

     

    最後に植木さんに、ご自身が生まれた1985年についてお聞きしました。

     

    「私が生まれた1985年頃のファッションもカッコいいですよね。当時の男性が着ていた肩幅の広いダブルのソフトスーツとか、マイケル・ジャクソンのスタイルとか、そういうのはよく映像でも見ています。今後、マイケルのような歴史に残るミュージシャンのMV衣装としても使っていただけるブランドになりたいです(笑)」

    SAORI UEKIのアイテム

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