ファッションは自由、だから楽しい <br/>Interview with シトウレイ

ファッションは自由、だから楽しい
Interview with シトウレイ

ファッションクリエイターが考える“繰り返すファッション”
for FF Magazine

FEATURE

2023.11.24

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    ストリートスタイルフォトグラファーとして、2000年代前半から活動を続けるシトウレイさん。自身のプラットフォームである“STYLE from TOKYO”の名前のとおり、東京のファッションスタイルを自身のフィルターを通して世界に向けて発信を続けています。東京、そして世界のファッションピープルを追いかけ続けるシトウさんに、ファッションの吸引力やそのパワーについてお聞きしました。

    (この記事はRAGTAG発行の「FF Magazine Issue : 01」の抜粋記事です)

    ファッションに“正解”なんてなかった

    ―シトウさんが最初にファッションにのめり込んだのはいつ頃ですか?

     

    シトウ : 本格的にはファッションスナップを始めてからなので、2004年からです。大学入ってすぐに仲良くなった男友達がファッション好きで、一緒に原宿とかに行っているうちに「ああ、ファッションって面白いな」と思ったのが最初ですけど、その頃はまだそこまでのめり込んだわけでもなくて。

     

    ―シトウさんのストリートスナップの最初のキャリアは、雑誌ですよね。

     

    シトウ : それまでの私は、ファッションって何か正解があるものだと思っていたんです。「イマはこの形、このブランドが正解」みたいな。でも、そこには違和感を覚えていて。急にオレンジが流行ったら着るとか、何かブランドが流行ったらそれを買うとか。「じゃあ自分の気持ちはどこにあるんだ?」というモヤッと感があったんです。でもストリートスナップを始めて、その迷いが消えた瞬間に、「ファッション超楽しい!」と思えるようになりました。

     

    ―それはどうしてそう思えたのですか?

     

    シトウ : おしゃれな子たちを撮影していくうちに、「あ、ファッションに正解なんてないわ」と思えたんです。女の子がロングスカートをワンピースにしていたり、男子もスカート穿いたり、マフラーを腰に巻いたりとか、みんな着こなしがすごく自由で。そこには○も×も正解も不正解もない、スキ・キライ、感覚や感情で判断するものなんだと。それが分かったら、「なんて楽しいの! 何やっても自由ってこと?」と、そこからパカーン!と楽しくなって(笑)。トレンドもあまり意識しないようになりました。

    ストリートスナップ20年で見えてきたもの

    ―近年はYouTubeでも発信をされていますがが、いま『STYLE fromTOKYO』ではどれくらいの頻度でストリートスナップ撮影はしているのですか?

     

    シトウ : 常にカメラは持っているし、週3回くらいは撮っているかもしれないです。撮影する時に持ってもらう番号の紙も5000番を突破しました。

     

    ―それはずっと継続してきた数字イコール人数、ということですよね。のべ5000人はすごい数ですし、今でも週3で撮っているのも驚きです。

     

    シトウ : これが自分のベースですから(笑)。でも今は街をぶらぶらするというのは難しくなっていて、展示会だったりショーだったりを狙うようになりましたね。

     

    ―2004年からということは、来年でファッションスナップ歴20周年になるわけですよね。

     

    シトウ : ねー、どうしましょう(笑)。

     

    ―約20年後の今の若い世代を撮影していて、どう感じることが多いですか?

     

    シトウ : そう、それは期待しているんですけど、感覚的にはまだですね。2004年は日本の男子が急におしゃれになった時代なんですよ。それまでは裏原が“ファッションの王道”みたいな感じだったのですが、急にズタズタな古着を着始めたり、レイヤードして髭にロン毛みたいなスタイルが爆誕し始めて。ちょうどその頃は[ジェレミー・スコット]みたいな変な服が流行ったり、日本のデザイナーさんも変な服を作り始めて。色んなジャンルで色んなおかしなことが同時多発的に行われていた時期でした。

     

    ―約20年後の今の若い世代を撮影していて、どう感じることが多いですか?

     

    シトウ : オン・オフがハッキリしているなと思います。例えば東京コレクションの会場に行っても、めちゃめちゃおしゃれしているんですよ。「どうしたの? 帽子を3つもかぶって!」みたいな(笑)。すごく頑張っておしゃれするけど、逆に原宿に買い物に行くみたいな時はそこまででもなかったり。

     

    ―同じ人でもそれだけオンオフの違いがあるということですね。でも2004年頃の人は。

     

    シトウ : 街でも振り切っていましたね(笑)。でもそれは原宿という街がスナップの会場だったし、SNSもなかったから、“見る、見られる”の場所がリアルにそこにしかなかったというのはあると思います。

     

    ―先ほどトレンドの話もありましたが、声をかける被写体の人がどれくらいトレンドを取り入れているかは気にしますか?

     

    シトウ : トレンドはまったく意識していなくて、「この子は自分で服を選んでいるな」という人を撮るようにしています。今これが流行っているからとか、今これがイケているからではなくて、自分の感覚、自己責任で着ている人を選んでいます。それが結果トレンドの服だったり、ブランドだったりということもあるんですけど。

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    ストリートからランウェイへの逆流

    ―シトウさんは海外のコレクションも行かれますよね。コレクションを見ていて、ファッションの繰り返しを感じることはありますか?

     

    シトウ : 初めてパリに飛ばされたのは2006年なのですが、ちゃんとランウェイを見始めたのは2015年にセミナーを始めた頃からです。それまでは会場スナップが主戦場だったので、大変失礼ながらランウェイシートは「疲れた時に座らせてもらえる場所」くらいに考えていたフシもあって(笑)。そのセミナーでは、パリコレのストリートスナップから見えてきたファッションのトレンドをお話したりもするのですが、やはりランウェイとストリートの相関関係や循環というのはあるんです。

     

    ―それはどういう関係ですか。

     

    シトウ : ランウェイがあって、それを見たお客さんがいて、そこからストリートにファッションが落ちる。そういう流れはもちろんあるんです、上意下達的な。でも近年はボトムアップも顕著で、キッズの中で流行っているものをモードが取り入れるという、下から上への流れもあります。Y2Kファッションを[ミュウミュウ]的にアレンジするならこの落とし所、[シャネル]的に落とし込むならこんな感じとか。

     

    ―ある種の逆流ですね。

     

    シトウ : 両方の流れがあるのだと思いますね。あとは東京の方が(ファッション的に)早いと思います。

     

    ―それは、今もそうなのですか?

     

    シトウ : 私はやっぱり東京ストリートは早いなと思います。こういうのが流行っているんだなと思って見ていると、それをパリのキッズが真似をして、次のシーズンにメゾンが取り入れるみたいな流れはよく感じます。

     

    ―それは日本人としては嬉しい現象ですが、少し意外ですね。

     

    シトウ : でもそれは当たり前だなと思っていて。昔はデザイナーが自分のクリエイションをバン!と出すものでしたけど、今は“アーティスティック・ディレクター”の時代だから、リサーチ、マーケティングしてからのクリエイションなんですね。やっぱり売れてなんぼの世界だし、自分の好きなことだけやっていても売れないからだと思います。昔だったらデザイナーのインスピレーションは、アートや音楽から受けて、その先にクリエイションがありましたけど、今のインスピレーションソースは街にあるんです。

     

    ―その現象について、シトウさんはどう思いますか?

     

    シトウ : 私はストリートが一番好きだし、そこを見ておかないとファッションなんて分からないと思っているので、「ようやく私たち街のクリエイションに気づいてくれました?」という気持ちかも知れないですね(笑)。

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    Profile

    シトウレイ

    ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト

    早稲田大学卒業。石川県加賀市生まれ。世界各国のコレクション取材を行い、類稀なセンスで見極められた写真とコメントを発信。TV やラジオ、ファッションセミナー、執筆、講演等、活動は多岐に渡る。2020 年に“Style on the Street : From Tokyo and Beyond” をアメリカ Rizzoli 社から世界同時出版。YouTubeのシトウレイチャンネルでも発信中。

    HP : http://reishito.com
    Instagram : @reishito
    https://www.instagram.com/reishito

    Creative Staff

    Interview & text : Yukihisa Takei(HIGHVISION)
    Photo : Yasuyuki Takaki

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