Trend Time Machine タイトル画像

Trend Time Machine

「古着ミックススタイル」
-古着と新品が出会ったその時-

「トレンドは廻る」ということはよく言われていて、それはだいたい20年の周期らしい。現在のトレンドも、実は20年くらい前に流行っていたものがアップデートされたものが多いわけだけど、じゃあアップデート前はどんな感じだったんだろう。
当時を知るベテランのスタッフに、当時を知らないスタッフが話を聞きに行ってみた。
今回のテーマは「古着ミックス」。

当時を知る人
事業推進チーム NAKAJIMA
RAGTAG スタッフ NAKAJIMA1975年生まれ。カルチャーとリンクしているファッション好きが高じて1999年に入社。長年ファッションに携わっていて、過去から現在までのファッションの成り立ちを把握しているのが強み。好きなブランドはSTUSSYやRalph Laurenなど。

当時を知らない人
RAGTAG Online編集チーム KADOSAKI
RAGTAG スタッフ KADOSAKI1993年生まれ。RAGTAG Onlineのコンテンツをいろいろ作っている。サブカルチャーとアートを愛してやまない。好きなブランドはka_na_taとCELINE。

●若者たちは古着と出会った

KADOSAKI(以下、K): 今回は「古着ミックススタイルのはじまり」というところを聞いていけたらと思います。ここで言う「古着ミックス」は新品と古着をミックスするスタイリングのこととさせてください。
これは僕の感覚にもなるんですが、僕ら世代(20代後半)からしたら、古着と新品を合わせて着るということはほとんど当たり前のことで、そこにはもちろん出会う場として「スピンズ」だとか雑誌の「CHOKi CHOKi」ってものがあったんですが、全く新しい発見みたいなものではなく、すでにそこに“あった”ものでした。でも歴史の中ではそれがはじまった地点が当然あって、どうやらそれは長くトレンドにある90年代に関わるということで、その頃の話を聞いてみたいです。
NAKAJIMAさんの感覚だと、そういうスタイルが流行したのはいつ頃だと思いますか。

RAGTAG NAKAJIMA インタビューされている様子

NAKAJIMA(以下、N): 感覚だと、90年代初めくらい。アーリー90sくらいです。自分の歳も言うとちょうど90年で15歳、高1でした。ちょうど多感な時期だったので、よりそういうことを感じたのはあったと思います。
じゃあ前置きとしてその少し前のことから話していきますと、それまで周りのお兄さんたちは、DCブランドだったりヨーロッパ系だったりを着ていて。

K: ヨーロッパ系というと…[agnès b.(アニエスベー)]とかですか?

N: いやそれよりもっと前(アニエスベーは92年ごろに一度流行があった)、イタリーものです。[アルマーニ]のスーツとか、バブルっぽいいわゆるDCブランド(デザイナーズ&キャラクターズ の略)でした。[COMME des GARCONS(コムデギャルソン)]や[ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケ)]、[COMME ÇA DU MODE(コムサデモード)]や[TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)]とかが80年代中盤から後半にかけて流行ったんですが、今度はそこから時代がアメカジに移っていきました。

イッセイミヤケ コムデギャルソンオムプリュス ジャケット左からISSEY MIYAKE オンラインショップで見る
COMME des GARCONS HOMME PLUS オンラインショップで見る
今では日本の重鎮ブランドとして知られるブランドたちだ。


N:大人たちがDCブランドとかを着ているのに対して、まだお金をもっていないキッズたちが自分たちで楽しめるファッションはないかなって考えたときに、それが「アメカジ」というものだったわけです。それまでの企業やブランドが作った流行っていうよりも、ストリートから生まれたものがかっこいいとされるような風潮へと、時代が変わったのが80年代後半あたりから。そのとき「古着」というものが入ってきました。

K: 当時から古着は安いものでしたか?

N: 安かったですよ。「サンタモニカ」とか「シカゴ」とかが当時からあって。あとは円高の影響で安く古着を輸入することができたという時代背景もあります。

K:円高の影響もあるんだ…。背景にファッション以外の世の中の動向もあるというのは興味深いです。そしてそこで若者たちが古着とともに独自のファッションスタイルや楽しみ方を編み出していったわけですね。

N: そうです。さらにそのころも映画の影響も強くなってきて、「ビバリーヒルズコップ」なんかの青春映画から、ジーパンに[CONVERSE(コンバース)]っていうアメリカ人のかっこいいファッションスタイルが刷り込まれていきました。

K: 当時は海外の情報を得るのに映画の存在は大きかったですもんね。

N: ファッション業界のひとたちもそういうものを見て、影響を受けて変わっていったと思います。アメリカファッションへのあこがれ。

古着ミックス NAKAJIMA インタビューされている様子

K: じゃあそうしてアメカジスタイルとともに「古着を楽しむ」という流れが生まれたわけですが、まだその段階では新品とはミックスしていなかったですか?

N: そうですね…合わせてなくはなかったですが、この80年代中盤~後半ぐらいは「アメカジ」というくくりの中で合わせることが多かったですね。「軍モノ」だったり、[コンバース]、[ミッキーマウス]、[コカ・コーラ]とか、そういうものがどんどん入ってきていたので。吉田栄作さんみたいな、ジーパンに白Tっていうシンプルなスタイルがイメージしやすいですかね。

ノンネイティブ M-65 リーバイス Tシャツアメリカカルチャーがなだれ込んできたこの時代。
左からM-65ジャケット:nonnative オンラインショップで見る
Tシャツ:Levi’s オンラインショップで見る


K: じゃあその次にまた古着の周りでなにかムーブメントが起こるわけですか?

N: はい、例えばただのアメカジじゃなくて、日本の若い学生が独自に[Ralph Loren(ラルフローレン)]とかを着だして、それが渋谷のカジュアル、渋谷に集まる若者たちが好むカジュアルとして「渋カジ」になっていきました。これが80年代後半から90年代頭くらいの事。都内の私立校に通う、感度の高い人たちから始まりました。当時明治通りにいっぱいアメリカもののセレクトショップができていって、そこでスタジャン作ってチームを組みだして、そこから“チーマー”に派生していったりもしたんですけど(笑)

カーハート スタジャン渋谷の街にスタジャンを着た高校生が現れる。ポイントはやはりワッペン。
スタジャン:carhartt オンラインショップで見る

K: さらにそこから“ギャル男”にもつながってくんですね…

N:そんな渋谷の高校生とかファッション好きが、インポート物をどんどん着崩していきました。アメリカの学生がアイビールックを着崩して、プレッピーカジュアルになっていったのと同じように。
渋カジの中で流行った[RED WING(レッドウィング)]のブーツは、本来はアメリカの本物の労働者が履くようなワークブーツで、向こうの学生たちが履くわけじゃないんですが、それを輸入してきたら日本のファッション好きに売れていました、“アメリカのブーツ”ということで。それをジーンズと合わせる人がでてきたりして、それはもう独自の“ミックススタイル”でした。サーフTシャツに[レッドウィング]を合わせたり、他にもインディアンジュエリーを取り込んだり、という着方が広まっていきましたね。

K: じゃあそのあたりでまず「ミックススタイル」っていうものが浸透していくんですね。

N: 若者ってやっぱり着崩すのが好きですよね。制服のシャツの裾を出しちゃうように。その着崩しの中で「ミックス」することが生まれて、広まっていったんだと思います。

K: みんなが本来の用途やそれまでの着方を「着崩し」ていったんだ。そういう意味での“ミックス”がカジュアルシーン全体に普及していったと。

ナイキ エアフォースワン

 

●「そういう着方もありなんだ」

K: じゃあいよいよ、ミックススタイルの中でも「新品と古着をミックスしよう」という、今回のテーマの核に入っていくわけですけども。このスタート地点のことを聞いていきたいです。どこかにポイントを打つとしたらどこだと思いますか。

N: あのころ古着が一般化していって、そこにはレギュラーもヴィンテージもあって、古着文化がどんどん広がりを見せていたのですが、僕の中で象徴的だったのが藤原ヒロシさんの着こなしで、それが一つ転換点になると思います。
当時「宝島」と「CUTiE」という雑誌で藤原ヒロシさんが連載していて、巻末で“イケてるもの”や“流行の最先端なもの”を紹介するコーナーでした。そこではよくアメリカとか、ヨーロッパの輸入ものを紹介していて、例えばアメリカからはBIG POLO(ポロ ラルフ ローレンのオーバーサイズコレクション)だったり、ヨーロッパから[HERMES(エルメス)]のブレスレットだったりです。そういったものを古着と合わせてスタイリングしていて、それが当時すごくかっこよかったんです。それが僕の思う「古着ミックス」のスタート地点ですね。

K:いろんな新品のアイテムを使って、古着と「何か」を合わせるときの「何か」の幅をより広げてくれたんですね。「そのやり方はなかったわ!」「それを合わせていいんだ」という衝撃があったわけだ。

N: ありましたね。いまでもよく覚えてます。

古着ミックス コムデギャルソン シャツ

K:みんなが「アメリカ」っていう枠の中でプレイしていた中でのそれだから、着こなしの幅が一気に広がりそうだ。それを雑誌という媒体で世の中に広めたのなら、それは「古着ミックス」のスタート地点と位置付けられそうです。
それを目の当たりにして、当時のNAKAJIMAさんはやっぱり影響されましたか?

N: 93年くらいに雑誌で[コムデギャルソン]のシャツとヴィンテージデニムを合わせたりしていて、衝撃でしたし、影響されましたよ。「そうやって着てもいいんだ」って。

K:当時NAKAJIMAさん自身、実際[ギャルソン]のシャツをそうやって着ていたそうですね。

N: 買えるようになったのは高校卒業後になりますが、やっぱり憧れていたので。プレーンな[ギャルソン]のシャツを買って着ていました。[ギャルソン]のシャツはサイジングがゆったりだったので、当時流行ってたゆったりめのデニムともたしかに合わせやすかったです。ほかにも[UNDERCOVER(アンダーカバー)]のシャツを合わせたりしていました。古着のデニムを軸に、モードやデザイナーズのシャツを合わせる感じです。そう、ちょうど用意してくれたまさにこんな感じ(笑)

コムデギャルソンオム シャツ リーバイスビンテージクロージング デニム当時の着こなしを想像してRAGTAG Onlineからアイテムをチョイス
シャツ:COMME des GARCONS HOMME オンラインショップで見る
デニム:LEVIS VINTAGE CLOTHING オンラインショップで見る
スニーカー:NIKE オンラインショップで見る

K:今こうして合わせてもいい感じになりそうですね。今って[ギャルソン]とかモードブランドは、また1周廻ってかモードにまとめる着方をする人が多いイメージです。「モードブランドはモードな人が着る」みたいな。こうやってシンプルにデニムと合わせるのは、逆に新鮮に映ります。

N: また時代が廻ってるのを感じます。

 

●RAGTAGも古着ミックスとともに

K:お話を聞いてて気づいたんですけど、この古着ミックスってテーマはRAGTAGにも結構関わってきますね。RAGTAGでは[Levi’s(リーバイス)]も[ギャルソン]のシャツもどっちも置いているわけで。

N: RAGTAGはそれとともに成長できたというのは一つあると思いますよ。ミックススタイルがあることで、[ギャルソン]のシャツを「モード」以外の人も求めるようになって、それでRAGTAGに買いに来てくれる人の幅が広がったというのは、今につながる話です。

K:「もっと自由に、もっと楽しく」、いろんなブランドを組み合わせて楽しめるお店ですからね。ってなんか宣伝ぽくなっちゃいましたが(笑)、みんなの着こなしの幅がどんどん広がったのは、この「古着ミックス」の広まりのおかげと言ってもいいのかもしれないですね。貴重なお話をありがとうございました!

N: 下の世代の人にこういう話を楽しんでもらえるのはこちらも嬉しいです。ありがとうございました!

RAGTAG スタッフ NAKAJIMA KADOSAKI

BUYER'S VOICE

CLOSETトップページに戻る